「被害者を思い出しながら」プリズン・サークル JYARIさんの映画レビュー(感想・評価)
被害者を思い出しながら
TCという再発防止の更生プログラムの話。
加害者が再び社会に戻る前に、何が必要なのか。
それを丁寧に描いた映画だと思った。
しかし、上映当時に刑務所に収容されていた40万人のうち、更生プログラムを受けているのは40人程度で、しかもそのうち再入所しなかった人数は半数程度だという。
この構成プログラムに、どれだけ費やすべきなのか一考してしまった。
必要性は十分に理解するが、「社会」はどれだけそれに協力すべきなのだろう。
入所者でなくとも本心で話し合う場は
人生においてかなり重要なものだと思う。
どうしたら、そういう機会が増えるだろう。
SNSだけでなく、面と向かって話し合えるような機会、サークル。日本にはどれだけ少ないか。
この映画を観る上で勿論忘れてはならないのは
被害者の存在だ。
今回、映画で取り上げられたのは懲役10年未満の犯罪であるが、いずれも被害者がいることを忘れてはいけない。
更生プログラムで初めて自分の本心を話すことが出来て、仲間ができて、自分を見つめ直し無事社会復帰した青年に涙する映画では決して無いのだ。
おそらく監督の意向で、子供時代の思い出が語られるが、それで何かを擁護できるわけでは決してない。この映画はナレーションが無く、擁護では無いフラットな姿勢で彼らを映しているように見えた。
「暴力の連鎖」を止めようという時に、被害者の存在を忘れてはならない。
が同時に、ではいつ加害者は笑顔になれるの?と考えてしまった。
いつ社会に馴染めるようになるの?
常に贖罪し続けないといけないの?
いつ「虐待被害」から解放されるの?
「死にたい」と思わずに済むの?
いつになったら救われるの?
どれも擁護では無いが、彼らの人生の事実である。
ただ、坂上香監督が
「自分も「暴力の連鎖」を体現してしまったことがある。その為、それに向き合うのが自分のライフワークだ」
と語っているのを見て、何か納得したところがある。