テイクオーバーゾーンのレビュー・感想・評価
全5件を表示
【”リレーは仲間がいないと走れない。”複雑な家庭事情を持つ思春期のヤサグレ少女の傷心と再生を描いた作品。オーディションで選ばれた原石のような若き方が主演の青春映画も、又良いモノである。】
■田中沙里(吉名莉瑠)が11歳の時に両親は離婚し、母親(内田慈)は大好きな弟を連れて出て行った。
それから3年、陸上部エースながらも傍若無人で尊大な態度に過ごしていた沙里は、スーパーで弟と再会する。
しかし、そばにいたのは沙里の母親と、沙里とは走力の差がある微妙な関係の陸上部部長・雪菜(糸瀬七葉)だった。
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・田中沙里を演じた吉名莉瑠さんという若き女性の目力が印象的である。
両親が離婚し、父親(川瀬陽太:良い演者である事を再認識。)は工事作業者だが、金にだらしがない為かいつも金欠。
故に、父には”お前”呼ばわり、母には”アイツ”。
陸上部でも、唯我独尊を貫くヤサグレ少女を好演している。
・雪菜に故意ではないが、顔に傷を負わせてしまい、陸上部を辞めた後に、お婆ちゃんの家に弟と出かけた事を切っ掛けに、微妙な関係の陸上部部長・雪菜と徐々に心を交わし、父に初めて”陸上部に入部したい”と頭を下げ、クラスメートにも、陸上部員にも頭を下げるシーン。
ー 沙里が色々な出来事を経験し、少しだけ心が成長した事を示唆している。-
・そして、それまでは第三走者に指名されるとブー垂れていたのに、第三走者に指名されても素直に従い、大会へ。
■大会で第三走者として走る沙里が浮かべた笑顔。そしてバトンは雪菜に渡される。
競技後、厳しかった母親に”頑張ったね”と言われ優しく抱かれ、涙する姿。
そして、軽トラに乗った時に運転する父親の腕を強く掴む姿。
沙里の強気で傲慢な態度は、両親への愛情に飢えていた事が分かるシーンである。
<今作は、複雑な家庭事情を持つ思春期の中学生少女の傷心と再生を描いた作品である。アイドル主演の青春映画も結構好きだが、今作のようなオーディションで選ばれた原石のような若き方が主演の青春映画も、又良いモノである。>
心もたまには天日干しが必要ですね。
いやぁ、良い映画だなぁ。
見終わった直後、少女の嗚咽の余韻ととともにしばらくその感情に浸ってました。
冷静に振り返ると、この監督は結構厳しいんです。
『もっと強くなる』
中学生の少女に負わせるにしては、あまりにも過酷な状況なのに(もうすぐ弟とも、せっかく心が繋がった雪菜とも別れてしまうというのに)そう言わせます。
しかも最後は、あれほども頼り甲斐のない父親の温もりに縋って、いつ止まるのか分からないほどの嗚咽のままエンドロールに入ります。
言葉にしたら陳腐で白けてしまいそうなこと(例えば、守るべき存在の弟、とか、リレーの仲間との絆とか)は、すべて端折ってます。
走りながらこぼれる微笑、ラストの父親の待つ軽自動車までの少女の視線、車中での嗚咽…。
まったく奇を衒うことのない、ごく普通の映像の繋がりなのに少女の胸の内が、自分のことのように伝わってきて、感極まって泣けてくる。
中学生の部活の話なのに、部室の汗臭さよりも、心の澱(おり)が綺麗に浄化された感じです。まるで、梅雨明け直後に布団も枕もみんなまとめて天日干ししてすっかりカビ臭さや湿気が抜けたように。
心揺さぶられる作品!
地元奈良が舞台ということと伏見中学校の生徒さん達が出演しているというのを聞いて興味が湧いたので観てきました。
序盤から再婚した母親との再会やその再婚した家族内のやりとり、主人公の荒んだ生活シーンの連続にハラハラドキドキして、普段、コメディ映画を見ている私としては、「早く箸休め的シーンがほしい!」と思ったところで、モロゾフのプリンの容器でお茶を飲むシーンが。私たち世代の「あるある」に思わずニヤリ。細かい所にもこだわって作ってるんやなぁと思いつつ物語はいよいよ終盤へ。
この映画で最も印象深かったのが、主人公が母親家族と別れて父親の待つクルマに向かって走っていくラストシーン。
競技場内からクルマに乗り込むまで、ノーカットで主人公をカメラが追いかけていくのですが、母親から離れていくほどにカメラのブレが大きくなっていき、最後にクルマに乗り込んだ瞬間、堰を切ったように泣くシーンには、主人公の気持ちがよく表現されていたように思います。
みんな笑顔でのハッピーエンドではなかったですが、今後の主人公の成長や日々の生活を視聴者に想像する余地を残した良い作品でした。
親子の愛
奈良の美しい景色、多感な中学生の感情がミックスされ、素晴らしい映画でした。
映画のラスト、陸上競技場から出てお父さんの待つ車へ。主人公沙里の背中だけを追う長回しのシーン。背中だけですべての感情が語られ、涙がとまりませんでした。劇場内も、すすり泣く声が静かに広がり、上映後もしばらくは席から立てませんでした。
劇中の大人たち、一見それぞれ勝手な思いで生きているようで、奥深いところでは皆、真剣に自身や家族と向き合っていることが感じられ、何とも言えない感情に包まれます。
ラストシーンで一番感情を持っていかれましたが、そこでエンドという潔い終わり方にも、その後の展開を想像することができ、とても納得しました。
公開中、何度も足を運びたくなる映画です。
早く全国ロードショーになり、多くの方、特に中学生に観てもらいたいです。
事前情報なく見に行った。 泣いた。感動した。 テイクオーバーゾーン...
事前情報なく見に行った。
泣いた。感動した。
テイクオーバーゾーンは、陸上のリレー競技で、バトンを受け渡すことができる範囲。
長さ20メートルの区域で、これ以外の場所での受け渡しは失格となる。
バトンゾーンのことだ。
主人公は中学生で陸上部所属の女の子。
両親は離婚し、母と弟と離れ、父親のほうについた娘は、汚いアパートに住んでる。
酔っ払って床で寝る父親に悪態をつきながらも父の分の朝食を用意している。
離婚した両親、別れた弟、同級生、先生、進路、再婚。。。
家庭環境だけでなく学校生活でも様々な人間関係に翻弄され、走り回る。
ダメな親父の姿を見て、自分のことを惨めに思いながらも、周囲に当たり散らす彼女の胸中が痛いほど伝わる。
最終的に掴んだバトンに感動した。
全5件を表示