「とても好きな空間、そしてありがとう恵比寿ガーデンシネマ」わたしの叔父さん KZKさんの映画レビュー(感想・評価)
とても好きな空間、そしてありがとう恵比寿ガーデンシネマ
主人公のクリスは農場を営む叔父と田舎で生活している。叔父は足が不自由であり半ばクリスは介護も担っている状況である。
なぜ叔父と暮らす事になったのかというとクリスが14歳の時に兄弟を失いそれを追う様に父親が自殺をし独り身になったところ叔父が引き取ってくれたそうだ。
その背景もおそらく作品が始まって30分くらい経ったくらいで叔父の知人の獣医がそのまた知人との会話で知る事となる。
この作品はクリスと叔父が必要以上に会話をしない為中々彼女らの情報が入ってこない。
ただしその描写がこの作品の最大の魅力でもある。
両者とも口数が少ないため、会話が一方通行であったり、時には問いかけに対して返事がない事も多々ある。
ただ次のシーンではその問いかけ通りの行動描写に移っており必要以上の言葉を発しなくても互いに理解し合いそして尊重しあっているのな伝わる。
またクリスの生活は毎日が決められた時間に、同じような行動を淡々と繰り返す日々である。
表情が変わらない為それらも序盤には不満があるようにも勝手に思ってしまったが、ストーリーが進むにつれて彼女自身がその生活を望み、そしてちょっとした変化に不満を覚えたりストレスを感じたりする姿が見受けられる。
もちろん今の生活を送る事で彼女自身他にもやりたい事を犠牲にしているのも見受けられたが、それをひっくるめて彼女は今の生活を望み、そして叔父を愛しているのが伝わる。
叔父も叔父でクリスに事細かくあれこれ言われ行動を制限され、時にはストレスに感じている所もあったがそんな口うるさいクリスの姿もひっくるめてクリスを愛し信頼しているのが伝わる。
この2人は言葉数は非常に少ないが互いに愛し信頼しあってるのがストーリーが進むに連れて感じ取れるのがこの作品の美しさでありとても魅了された。
この"静"なる空間を個人的にもとても好きな空間であり、その空間を大切に美しく描いてくれるこの作品は自然と好きな作品となってしまった。
この"静"なる空間は僕だけではなく日本人が好む空間ではないか。であれば自然と日本人ウケの良い作品になるのではないかと感じた。
クリスがここまで叔父を愛し、自らが犠牲になっても叔母に尽くすのは父親を失った時に、そして引き取られた時に余程親切にしてもらい嬉しい気持ちがあったからなのかな想像しながら観賞しそして作品が終わる。
エンドロールも音がなく静かに終わりとても温かい気持ちで劇場を後にすることができた。
改めて振り返ってもこの2人の関係性は素敵であり、とても憧れる関係である。ただこの関係性は余程の信頼関係がないと成り立たない関係でもある。だからこそ美しくそして魅力ある描写であった事が改めて感じる。
この作品を持って僕がよく利用する恵比寿ガーデンシネマの新作公開は最後となり、2月末にて一旦休館となる。再館の時期は現時点では未定であり、好きな劇場の一つのため寂しく思うが最後にこの様な素敵な作品を観ることができとても感謝の気持ちでいっぱいだ。