「熱い!熱すぎる作品。で、面白い!」ジャスト6.5 闘いの証 バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)
熱い!熱すぎる作品。で、面白い!
イラン映画、多分初めてです。ワクワクしながら鑑賞です。
警察VS麻薬犯罪者の追走劇なんですが、一般的な犯罪物、刑事物とはちと違うんですよね。
ここで描かれるのは「誰が犯人なんだ?」というサスペンスではなく、とにかく人間同士のなんの飾りもない、生々しい欲望のぶつかり合いが描かれています。立場が違うものが、今のイランという国の中で個人として欲望に忠実に生きていく過程でのぶつかりです。
警察、犯罪者、司法、善悪なんて途中からよくわからなくなります。人権ってのもどこ吹く風。
これがもしかして、イランの現実なんだろうか?と思ってしまいます。
それぞれに事情と背景があり、そこから生まれる欲望、願い、望み・・それらになんとまぁ忠実なこと。自分第一、家族第一。それが犯罪だろうが、ルールを守らないことだろうが。
まぁ息つく間も与えられないほどに、エネルギッシュな人間の生身のぶつかり合いでストーリーが進行していきます。
展開はすごくスピーディーです。あれよあれよと展開していきます。しかし、それは乱暴な展開というわけではなく、しっかりとした積み上げ式のストーリー(まぁ捜査の物語ですから)となっています。
また、前述の通りに人間の欲望のぶつかり合いの醍醐味もありますが、人間同士の企み、陰謀、計略、騙す、疑心暗鬼、などなど本心が見えない・・・こいつ一体何を考えてるんだ?的な行動もあり、本当にハラハラドキドキします。・・・話の行く末が見えないのです。
「まじ、これどーなんの?」って感じです。
それも制作サイド、監督の手腕なのでしょうが。
みーーーーーーーんな腹黒いんだもん。
途中、犯罪者の肩を持ちたくなるような心情になった自分に驚きました。
もう一回言いますが、みーーーーーーーーーんな腹黒いんですもの。
でも、それらが重なり合って、素晴らしいエンタメ作品となっているのではないでしょうか?
また、本作品はそんな追走劇、逮捕劇をストーリーとして観せていますが、実の所「イランの現実と問題点」を浮き彫りにしたいという監督の意思があるのではないか?と思ってます。
・オープニングのスラムの描写
・留置場(裁判前の一時放り込まれる場所)の中の描写、
・なぜに薬物中毒が後をたたないか?の原因
・増え続ける貧困
・歪な司法、裁かれ方、と容赦ない制裁
・・・・・・そして、ラストカット。
発展しながらも確実に分断されていくイランの国そのものを描いているのではないでしょうか?
ストーリーを進める中で、絶妙にこれらの情報を入れ込みジャスト6.5(100万→650万のことかな?)になってしまうイランという国の今を明らかにし、観る人々に訴えているのではないでしょうか?、いや、国政にも訴えているのかな?
どうせやったって、減らないじゃないか・・・・徒労感を滲ませる刑事の言葉が世論を代表しているのでしょう。
とにかく熱い、とんでもない熱量の傑作でした。