劇場公開日 2020年12月4日

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「期待とは異なる衝撃が主観を木っ端微塵にする圧巻のドラマ」ミセス・ノイズィ よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0期待とは異なる衝撃が主観を木っ端微塵にする圧巻のドラマ

2021年2月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

主婦で小説家の真紀は出産を機にスランプに陥ってしまい、書き上げた作品も編集者にダメ出しを食らい、かつてのファンもだんだん離れていってしまう。そんな折早朝から隣家のベランダでけたたましく布団を叩く音がただでさえ毛羽だった真紀の心を蝕んでいく。溜まりかねた真紀は隣家の主婦美和子とベランダで派手な言い争いをしてしまったところその動画がYouTubeでバズってしまい、ただの小競り合いが大騒動へと暴走していく。

私はこの主人公に物凄く嫌悪感を感じていましたが、そういう先入観や偏見が本作の肝。自分が美しいと思っているもの、正しいと思っていることを他人が同じように思っているとは限らないということが繰り返し突きつけられ、そんな主観がグラグラと揺れているところに突如放り込まれる台詞が胸に突き刺さります。他人事だと思って眺めていた光景に引き摺り込まれポスターから滲むイメージとは全くかけ離れた結末まで突き飛ばされるような感覚。爽快感と気恥ずかしさが同時に胸に湧き、両目からは悔恨の涙が溢れました。こちらが勝手に期待していたカタルシスとは全然異質な衝撃を鳩尾にかましてくる実に素晴らしい作品です。あとチラッとだけ登場する洞口依子さんの演技にも度肝を抜かれました。

よね