「トランプ時代のランボー! グロすぎ(苦笑)…映画的カタルシスという...」ランボー ラスト・ブラッド よしさんの映画レビュー(感想・評価)
トランプ時代のランボー! グロすぎ(苦笑)…映画的カタルシスという...
トランプ時代のランボー! グロすぎ(苦笑)…映画的カタルシスというより胸焼け、色々言いたいことありすぎた。例えば前作の路線を踏襲した残酷描写の数々も、そこに前作ほどの怒りや必然性は感じられない。前作『最後の戦場』のような先進国があまり取り上げることのない世界の真の惨状を、たとえ観客の中にトラウマ級の拒否反応を起こす人がいようと、是が非でも届けようとするスタローンなりの表現者としての真摯なスタンスは希薄になった。それに取って代わったのは人種差別を助長しかねない前時代的なメキシコ人描写だ。無論、国・地域問わず人身売買組織は本作のような目に遭えばいいと思うが、『ランボー First Blood』から路線変更した(それはそれで好きだけど)ランボー2『怒りの脱出』& 3『怒りのアフガン』がレーガン時代の"強いアメリカ"像を体現したように、本作はまるで多様性を否定し文字通り壁を築こうとするトランプ時代の"強いアメリカ"を体現するよう。ずっとタイを居住地にしていたランボーが前作の最後にアリゾナ州に帰ったので、今回の敵をすぐそばのメキシコにするという理論は理解できる。ただ、その描き方が悪かった。あと若者の描写もいささかザルで、トンネルの中でかけているドゥンドゥン音楽が"いかにも"すぎた。
スタローン版『96時間』? おまけに『ハロウィン』(2018)のローリーよろしく家の地下も改造して武装しまくり --- 一作目の原題『First Blood』に対して、本作の『Last Blood』は自ずと期待するものがあったが、結局のところシリーズ屈指の必然性の感じられないものになってしまった(山や森といったサバイバルものらしい舞台設定じゃない点もある)。これではホラー映画よりスプラッター描写を見られるファシスト的殺人映画のよう。前作の路線を突き詰めるなら、そこにより強い必然性が感じられなければならないだろうに、それどころか"地元のギャング"は確かに世界中あちこちにいるだろうし、人身売買も深刻な問題ではあるが、前作のミャンマーの軍事政権というピントの合った明確な怒りみたいなものがないことで、"残酷な世の中を描く"という点すら怪しくなっている気がした。