光を追いかけてのレビュー・感想・評価
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秋田の美しい風景と過疎化
父の故郷の秋田の田舎に引っ越してきた中学生の彰は転校先になじめなかった。そんなある日、空で緑の光を目撃し、田んぼのミステリーサークルにたどり着いた。そこで不登校のクラスメイトの真希と出会い、2人は親しくなっていった。
彰と友達になりたい田村が真希に嫉妬しミステリーサークルの事をネットに書き込み、騒動となり、真希が切れて・・・てな話。
思春期の生徒の悩みや未熟さ、そして大人達の現実的な悩みや葛藤を描いてて良かった。
秋田の田園、桜、山、空、海などドローンによる風景の美しさに感動した。
彰役の中川翼があまり話さないけど表情豊かで魅力的だった。真希役の長澤樹は不思議な魅力が有る美少女だった。村上役の中島セナも良かった。
教師役の生駒里奈はさっぱりで冴えなかった。
秋田県出身者の意見です
私は秋田県出身です。
そして本作は秋田県出身の監督が秋田県出身俳優を多数起用し秋田県を舞台にして全編秋田でロケを行なった映画です。
これは秋田県出身の私がレビューしないとと息巻いて、先日鑑賞してきました。
映画の事前知識はほぼありません。「秋田が舞台」って程度の事前知識です。
結論ですが、けっこう楽しめました。
本作は様々な登場人物の感情が入り乱れる群像劇であり、それぞれの登場人物の考え方や立場が違うからこそ生じる軋轢や葛藤がしっかり描かれていたと思います。鑑賞前に懸念していた「秋田県出身者以外の演者の方言演技が気になっちゃうんじゃないか」という問題ですが、多少イントネーションなどに引っかかりはありましたがそんなに気になりませんでした。エンディングのクレジットに「方言指導」などの役職は多分無かったので、おそらく秋田県出身者である成田監督や柳葉敏郎さんが秋田県出身でない演者さんへの方言指導も兼ねていたんじゃないかと思います。柳葉さんはガッツリ方言で喋っているシーンも何か所かあって、「これって他県の人はちゃんと聞き取れるんだろうか」って思う場面もあって気になりました。県外の方の意見も聞いてみたいですね。
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父の仕事の関係で、東京から父の故郷である秋田県に引っ越してきた中学三年生の中島彰(中川翼)。田舎の学校に馴染むことができず、中学校の閉校祭の準備にも参加せずに一人で趣味のイラストに没頭していた。そんなある日、彰は下校中に緑色に光る謎の飛行物体を目撃する。その物体を追いかけた先の水田にたどりついた彰は、謎のミステリーサークルと、クラスメイトで不登校の少女である岡本真希(長澤樹)に出会った。
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田舎に住む人たちの、都会に対する羨望であるとか、コンプレックスみたいなものをよく描けていました。都会に憧れるが田舎に燻る人・都会で夢破れて田舎で居場所を見つけた人・田舎を愛し留まる人などなど、多くの人の感情が交錯するストーリーで結構良かったですね。秋田県を舞台にしていますが、他の地方に住んでいる方にも刺さる「田舎と都会」の物語になっていたと思います。
あと、若い役者陣の演技は見事だったと思います。主人公の彰を演じた中川翼さんやヒロインの真希を演じた長澤樹さんは、どちらも2005年生まれの15歳。公式HPによると撮影は2019年9月に行われたそうですので、当時は二人とも13歳ですね。とても13歳とは思えない見事な演技でした。特にヒロインを演じた長澤樹さんは13歳とは思えないほどの大人びた魅力を持った素晴らしい演技でした。今後の映画界を牽引する役者になることは間違いありませんね。
ただ、不満点は少なからずあります。
他のレビュアーさんでも仰っている方がいますが、柳葉敏郎さんの演技が『踊る大捜査線』のような大仰な演技をしているのが気になりました。他の演者さんたちが比較的自然な演技をしているのに、一人だけ大仰な演技をしているとかなり目立ちます。もしかしたら監督も大御所の柳葉さんの演技に口出しできなかったのかもしれないと勘ぐってしまいますが、それは映画監督としても良くない姿勢ですし、柳葉さんにも失礼に当たる気がします。
あと、登場人物が結構多かったせいか、全部のキャラクターを描き切れていないようにも感じました。具体的に言えば生駒里奈演じる中学教師が抱えていた田舎コンプレックスのようなものが結局解決したんだかよくわからないエンディングになっていたように感じて、何だか中途半端なように感じました。
上記のような若干の不満点はありましたが、私の地元秋田県を舞台に映画を作ってくれたというだけでもありがたいので、是非多くの方に見ていただきたい映画になっていました。お勧めです。
解決しないのが解決策
先に鑑賞した何人かが「何にも解決しなくてちょっとモヤモヤするけどね」と笑いながら、「まあいい映画だよ」と教えてくれた。
確かに大手映画産業が手掛ければ、ちょっとした何か(例えば彰の画才)がきっかけになり、町が都合良く復興、閉校プランはギリギリで撤回、みんなハッピーな宴、というエンディングだろう。UFOはどうなるか知らんが。
現実はどこにも都合の良い話などなく、地方は衰退し、大人も子どもも夢や希望を語る余裕がない。何かを変えたくても「失敗した時は自己責任だからね」と機先を制され足踏みする。
生駒里奈演じる教師が「できることからやろうよ」と言い、柳葉敏郎演じる廃業間近の農業経営者が「ひさしぶりに本気出してみるか」と言い、何も解決していないのに、一筋の光を見出したようにして映画が終わるのは、だから仕方のないことなのだ。
ただ、それでいいとも思う。
経済的な側面だけの興亡など、これまで嫌というほど見てきた。たぶん多くの人たちが、刹那的に羽振りが良くなったかと思えば、虚栄を塗り重ね続けて疲弊したり、謙虚さを失って世間の片隅に追いやられたりしたたくさんの先例にうんざりしているんじゃないか。
ありきたりの人生かもしれないけれど、小さな一歩を踏み出して、少しだけ何かを変えてみることが、結果として何も生み出さなかったとしても、心の中に僅かに光が差すこともある。
生駒と柳葉のラストシーンでの表情は、そんなことを伝えているような気がした。
二人ともロケ地秋田の出身である。同郷の監督が、同郷の俳優に敬意を表して、与えた役柄とセリフだろう。
安易な解決策に振り回されず、地に足のついたエンディングとはこういうことを言うのだと思う。だから「いい映画だよという結論に納得するしかなかった。
余談だが、主演の長澤樹の唄は、ちょっとばかり驚いた。本編最大の意外なアクセントになっている。目力もあり、素敵な俳優に成長することを期待したい。
やわらかに輝く
一見のんびりに見えてその実 複雑に絡み合う田舎の軋轢
食えない人は出てくしか無い 今も昔も
なかなか帰れない故郷の空をスクリーンで眺めておもう
見せない事による効果が絶妙で小さな話がよりドラマチックになり得ている
屋根の上の民謡の一節に感涙 美しいシーンでした
新たな青春映画が生まれた
この映画は「青春映画」というカテゴリーに入るものだと思う。時代の違い、社会的背景の違い、地域や所属する集団の違いによって様々な青春群像がありうるので内容は千差万別であるが、自立する手前の未完成な人格に降り注ぐ様々な困難のなかで、戸惑いや苦悩や希望を描いている作品である。
事前に映画ドットコムで評価を見たのであるが、目立たない作品の割には高評価だったので期待を抱いて見に行った。結果は評価通りだったと言える。舞台は秋田の農村。金銭問題で落ち着かない家庭環境にあって不登校になってしまった真希と親の離婚で東京から親の実家に転居した彰が出会う。そして、UFOを見た共通の経験から互いに打ち解けていく。UFOは真希にとって唯一の逃げ場所だったのかもしれないし、彰にとっても慣れない土地と学校への不安からの逃げ場所だったのかもしれない。
二人が通う(べき)中学校は閉校になることが決まっており、生徒たちに不安が広がる。担任の女性教師は教師に自信が持てず悩んでいる。そして、農民は農業の行く末を案じている。テーマは、衰退する地域に住む人たちの不安の共有と再生への祈りの様な感情の共有ではないだろうか。特に若者に焦点が当たっているところが、青春映画と呼べる要素である。
最後は、不登校だった真希があるきっかけがあって教室に戻り、女教師も合流しクラス全員が集合する。ひと悶着あるが互いの気持ちが通い合って閉校を迎えることになる。彰が教室を出ていこうとする真希に向かって「逃げるな」と叫ぶが、ここが印象的にはやや意外なセリフで、主人公はずいぶん強くなったなあと思わせる。そうしないと最後の結末にしまりがなくなってしまうので、このような展開はやむをえないと思う。これこそが青春映画のよいところかもしれない。
泣いたけど「泣ける映画」とか言いたくない
秋田の先行上映で鑑賞しました。席数は150席くらいだったかと思いますが、満席でした。
まるでドキュメンタリーのような印象で、セリフや行動がとてもリアルでした。
序盤は閉塞感のある過疎化していく町のやりとりを繊細に表現しています。
ところが、何もなかった町にミステリーサークルが出現してからは、主人公や町の人に変化が起きて人々の心はぶつかり合いながら一つになっていきます。
その過程で起こる登場人物の感情の起伏にカタルシスを感じられ、非常に没入感がありました。
最後は黄金色に輝く田園風景がどこまでも広がる希望の光にも見えました。
特に真希の民謡が良かったです。
監督がインタビューで「故郷の秋田に恩返ししたい」と仰っていましたが、
秋田のための映画でありつつ、非常に普遍的な課題をテーマにしており、特に地元に嫌気をさして上京してきた人にとっては望郷の念を感じさせる作品になっているかと思います。
商業映画でよくある、数字取りのためにイメージに合わない俳優を起用したり、お涙頂戴的なものとは対極の映画だと感じました。
作品作りのモチベーションはピュアであればあるほど良いものが出来上がるのだなと思いました。また、CM業界出身のスタッフの高い技術力によって、美しい映像になっています。
星4.5にしたのは内容の素晴らしさをタイトルが表現しきれていないと感じたからです。
音楽は一つ一つは素晴らしいのですが、映画の世界観を表す一枚のアルバムのような一貫性があるとさらに良いと思いましたが、こちらは粗探しに近いかもしれません。
この映画を観て地元が恋しくなりました。
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