劇場公開日 2020年7月17日

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「展開が面白く、キレがいい」悪人伝 山田晶子さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0展開が面白く、キレがいい

2020年7月16日
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韓国での連続殺人鬼と言えば、映画「チェイサー」(2008年)を思い出す。連続殺人鬼の残酷な行為(描写)に耐えながらも、刑事とのやり取りに引き込まれた。

本作も実際に起きた連続殺人を元にしたものだが、「極悪組長×暴力刑事vs無差別殺人鬼」という組み合わせで、さらに極悪の組長が絡んでくる。
ヤクザ同士の人間関係とパンチのあるシーンがプラスされている分、殺人鬼の残酷なシーンが凝縮され、フィクションのような面白さを感じながら見ることができた。
極悪組長を演じるマ・ドンソクの存在感はバイオレンスというより「不動なお兄さま」のような優しさとドスの効いた迫力があった。
そんな組長の存在(意志)は最後まで見逃せない展開となっている。

落ち着きのない暴力刑事を演じるキム・ムヨルと組長が手を組まざるを得なくなってきてからの駆け引きも面白い。
立場と展開は全然違うが「ルパンと銭形警部」が休戦をして手を組むようなノリ。
事件を追うごとに言動と表情が様変わりしていくキム・ヨヒル(刑事役)は、重たい内容を少し和ませてくれるので、暴力刑事という一言では表せない重要な役柄であることを実感した。

異様なコンビである2人のターゲットは、たった1人の連続殺人鬼。なぜその殺人鬼を通して組長と刑事が重なったのか?その理由は序盤の時点でわかるが、見逃さないようにしていただきたい。

連続殺人鬼を演じるキム・ソンギュの異質な笑みも印象的で、全く違った3人の個性が本作に滲み出ており、それぞれが自分の面子を賭けて戦っていく。
怒らせると誰が1番怖いのか?
バイオレンスというよりも「駆け引き」が最後まで気になる爽快劇だった。

山田晶子