「小道具の濃密さがワンシーンごとにぎっしり詰まってる」フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊 マルホランドさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0小道具の濃密さがワンシーンごとにぎっしり詰まってる

2022年2月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

映画館で見たときにまず目を引いたのは、スクリーンに表示されるアスペクト比が横長ではなく縦長に映っていたところにある。この映画はある雑誌編集部の特別な増刊号という設定なのだが、縦長で見る分、雑誌を読んでいるかのような気分になれるのがほかの映画と違うところで、そこら辺のアイディアはよく作品に表れていて好きだな。どちらかというと漫画雑誌を読んでいるような気分で、漫画は一コマ一コマでシーンがわかれているが、よく右端から左、左端から右下へと目を進めていくがこの映画も同じような気分で読むように物語が進む。あとセリフが早いし映像もぱっぱっと切り替わっていき、個人的に登場人物を覚えようと真剣に追いついていこうとするだけでかなり大変だったのだが、途中から、漫画を読むかのように絵を追いかけていくように見れば絵でなんとなく流れがわかる作りにもなっていて「読む映画」なのだと理解した。オムニバス形式で独立した話が数個あるのもなんだかエッセイ集のようでそこも楽しませてくれる一作であり、オールドファッションでそろえた衣装や絵作り、ぱっと見何時代かわからないようなおとぎ話な作風は見るものを魅了させてくれる独特のエッセンスが効いていて見ていて楽しい。

マルホランド