「『命の選別』が抱える矛盾」仮面病棟 大熊舜さんの映画レビュー(感想・評価)
『命の選別』が抱える矛盾
『あらすじ』
数か月前、婚約者を自分の運転ミスによってなくした医師の速水は、職場からも離れ、自己嫌悪に陥っていた。速水の亡き婚約者の兄の小堺は、そんな速水にリハビリの意味も込め、自身の勤める病院の1日当直医を依頼します。
その日の夜、病院に下腹部に銃弾の傷を負った女子大生の川崎瞳が運び込まれてきました。
女子大生を運び込んだのは、ピエロの覆面を被った男でした。そのピエロは、彼女を打ったのは自分で、その傷を今すぐ治療しろと速水に迫まります。銃を突き付けられた速水は、さっそく彼女を手当てし、無事手術を終えます。
その後、ピエロは速水、川崎、看護師2人、院長の5人を病院に監禁し立てこもります。
速水は院長に、脱出を試みることを提案しますが、院長はそれを頑なに拒みます。
院長がそれを拒む理由がこの物語の大きなテーマとなっていきます。そのテーマとは、「生きる価値のある人間と価値のない人間」を仕分ける『命の選別』という考えさせられるものとなっております。
『見どころ』
最大の見どころは、川崎瞳(永野芽衣)の心境の変化に注目してこの映画を観ることです。
速水(坂口健太郎)と川崎瞳(永野芽衣)には身近な大切な人を亡くしたという共通点があります。その理由が病院側の『命の選別』によるものでした。同じ境遇を抱えながら2人の『命の選別』への憎しみの気持ちには差があります。川崎瞳が抱える憎しみの気持ちは速水と関わる中で、徐々に変化をしていきます。また『命の選別』に対して憎しみを抱えているにも関わらず、川崎瞳自身も病院で関わった看護師、ピエロ、院長たちを『命の選別』してしまいます(銃殺する)。そういった矛盾を抱えているのが川崎瞳です。その矛盾点を見つめること、そして何故、川崎瞳は速水だけは生かしたのか?
「川崎瞳の心境変化」に着目して映画を楽しんでください。