「仮面の下の本当の顔は…」仮面病棟 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
仮面の下の本当の顔は…
先輩から頼まれ、一日だけ療養型病院の当直をする事になった若い医師の速水。
負傷した女子大生の瞳が運ばれて来る。
彼女に傷を負わせたのは、近くのコンビニを襲ったピエロの仮面を被った凶悪犯。
病院に立て籠る。
ピエロの目を掻い潜り、病院からの脱出を試みる…。
…と、一見表向きはそうなのだが、
院内は南京錠や鉄格子など、まるで刑務所のような異様な雰囲気。
手術室も南京錠が掛けられ使われてないのに、瞳を治療する為開けて入ったその室内は、きちんとした設備。
64人の患者が入院しており、身元不明者は発見された場所と数字で呼ばれ、同じような手術を受けた跡が。
謎の隠し部屋や診断書。
何かを探しているようなピエロ。
頑なに警察を呼ぶ事を拒み、何かを隠しているかのような院長と看護士。
不審な院内の様子、ピエロや院長らの言動。
この病院には、何かある…。
劇場公開時は全く興味無く、見る前も期待してなかったのだが、これがなかなか面白い。
人気だけの若手俳優が出ているからと言って、見ず嫌いはやっぱ良くないね。『去年の冬、きみと別れ』『見えない目撃者』然り。
気付いたら、謎が謎を呼ぶ展開に引き込まれていた。
坂口健太郎と永野芽郁の“俺不在物語”でちと心配だったが、それは無用だった。
坂口演じる速水は先輩の妹と付き合い、結婚も考えていたが、事故で亡くす。事件と関係あり。
永野演じる瞳も大切な人を亡くした身。こちらも事件と関係あり。
高嶋政伸、大谷亮平、江口のりこ、内田理央、そしてピエロ…皆、無論事件と関わりあり。
徐々に明るみになっていく病院がひた隠す戦慄の秘密。
コイツが怪しい、コイツとコイツが繋がって…と色々考えを巡らし、やっぱりコイツだったのか!…と思いきや、もう一捻りで思わぬ真犯人。
それらが全ての謎が繋がり、明かされていく終盤は、ゾクゾクすらした。
さすがに伏せるが、真犯人の動機は同情してしまうもの。強者の為に弱者はいつも…。その演者もイメージ覆すような演技を魅せてくれる。
難点もあり。
凶悪犯に籠城されているのにも関わらず、ピエロも速水たちも結構自由に院内を歩き回り。
瞳も傷口を縫ってすぐあんなに動き回れないよ。
病院の戦慄の秘密。こんな不正を隠し通せるものか…?
また、映画の作りで言わせて貰えば、速水のラストシーンは蛇足だった。その一つ前の瞳のシーンで終わって良かったと思う。
他、粗い点やツッコミ所は多々。
採点3・5でも良かったのだが、どうしてもそこまで及ばず。
でも、思ってた以上に面白かったから、目を瞑ろう。
だけど、主題歌は最悪。
現役医師でもある作家によるベストセラー小説が原作。
ひょっとしたら我々が知らないだけで、こんな恐るべき不正や陰謀、それに近しい事が実際にあるのかもしれない。
本作はただそれだけを告発する作品じゃない。
命の在り方、医師としての在り方…。
復讐、憎む事の虚しさ…。
偽りの仮面を外して、本当の自分の顔を見せて。