「【”困難を乗り越えられると信じる事の大切さ” 且つてのロックスターが、様々なモノを失いながらも、歌への情熱を糧に復活を遂げる姿を描いたドキュメンタリー作品。復活したリアムの歌が染みます・・。】」リアム・ギャラガー アズ・イット・ワズ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”困難を乗り越えられると信じる事の大切さ” 且つてのロックスターが、様々なモノを失いながらも、歌への情熱を糧に復活を遂げる姿を描いたドキュメンタリー作品。復活したリアムの歌が染みます・・。】
ー”OASIS”は劇中でも描かれる2009年のノエル・ギャラガーの脱退により、徐々に失速していった・・。
そもそも”OASIS”はギャラガー兄弟の兄、ノエルの書く楽曲の素晴らしさと、その声を聞いただけでリアムと分かる独特の声が、奇跡的な昇華を起こしたことで、英国の90年代中期、一気にトップバンドの駆け上がったのだから・・。
私は、その後ギャラガー兄弟の和解を待っていたが、その気配はなく徐々に”OASIS”と言う稀有なバンドを忘れて行った。
そしてセカンドアルバム「モーニング・グローリー」だけを残し、他のアルバムは手放した。
約10年後、リアム・ギャラガーのソロアルバム「アズ・ユー・ワー」が全英一位となり、プラチナアルバムとなったと聞いた時は、驚いたものだ・・。
このドキュメンタリー作品は、彼が復活を果たすまでの10年間を映像で捉えた作品である。ー
■印象的なシーン
・”OASIS”が崩壊への坂道を転げ落ちて行った時期の、リアム・ギャラガーの言動。彼らを批判する人々のコメント。
ー当時「ロッキング・オン」を愛読していたので、よく覚えているがこの時期の”OASIS”のニュースはリアムの度重なる離婚に関するニュース、ギャラガー兄弟の諍いのニュースばかりだった・・。”何をやっているんだ・・”と呆れていたモノだ。-
・今作がドキュメンタリー作品として輝き始めるのは後半、40代になったリアムがもがきつつも、もう一度ロックを歌いたいという思いが描かれ始める辺りからである。
パプで酔っ払いながらも、俯きながらアコースティック・ギターで「ホールド」を歌うシーン。(良くぞ、このシーンを撮ってくれたよ、名もなきアイルランドの酔っぱらいさん・・)そして、沸き起こる拍手。今作の白眉のシーンの一つであろう。
・それまで、リアムが揶揄していたコールドプレイのクリスから、まさかのチャリティコンサートへの競演の声掛けをされた時のリアムの言葉。”クリスには、謝ったよ・・”
・リアムの新たなパートナー、デビーの存在。デビーがリアムについて冷静な観察眼に基づき語る言葉。
ーこの聡明な女性と出会った事で、リアムの現在があると、私は思う。-
・リアムが母親、長兄、そして母親の違う子供たちと一緒に過ごす時の穏やかな表情。母親や長兄のリアムについて語る言葉。
ーリアムにとって、彼らの存在も如何に大事であるかが良く分かる。-
・朝、4時に起床し、6時からランニングするノエルの姿。
ー信じられない光景であったが、彼がコンサートに万全の体調で臨もうとしている事が良くわかる。大人になったなあ・・。”コンサート前のハッパの量は、2gだけにしたんだ・・”と語るシーンなどは微笑ましくもある・・。-
<どん底を経験した一人の男が、家族、パートナー、仲間たちの支えにより、再びロックスターに返り咲いた過程を、10年もの長き間映し出したドキュメンタリー作品。深い喪失から再生していくリアム・ギャラガーの姿は、その歌声と共に、実に心に沁みる・・。>
■蛇足
・エンドロールで粉川しのさんの名前がクレジットされていた。「ロッキング・オン」の5代目編集長である。私が愛読していた頃、新入社員として入社した方で、いつの間にか編集長になっていた方である・・。今も音楽業界で頑張っておられるのだなあ・・。
今や、映画レビュアーとして名を馳せる宇野惟正さんも、記憶では新人として「ロッキング・オン」に入社し、かなりエキセントリックな音楽記事を書いていた記憶がある・・。