街の上でのレビュー・感想・評価
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日常(と文化)に恋する映画の魔法 --- 舞台挨拶!余韻がすごい
聞きますよ、恋バナ。どう思う?アウェーもホームにしてしまう。下北沢という街への愛に溢れた今泉監督流『ハイ・フィデリティ』みたい。公開が1年延期され、今ではもう"日常"ではない日常に思いを馳せるよう。誰も見ることがないけど、確かにここに存在してる。相変わらず、どころか普段にも増しての長回しで生み出される独特の空気感が本当にいい。現場でのアクシデントやその場その場の空気がそのまま生かされているのを感じる、随所に見て取れる。どのシーンを思い返しても愛しい。この映画すごく好きだ、特別だ。何から何まで最高すぎる。あ〜すっげー悔しいなぁ…。すっかり他の作品見る気失うくらい。
初主演だからといって特段気負うこともなく普段のまま佇む若葉竜也の受け・リアクションの芝居がいい。友情出演の成田凌然り、やっぱり監督と初めてでなく、ある程度気心知れた関係だからだろうか。例えば、まるでウディ・アレンが自身の作品にまるで自分のようなキャラクターを出すように、荒川青という主人公もまた少し今泉監督っぽさがあるのじゃないのだろうか?…なんて考えてしまう。嫌味なくまっすぐピュア。
また、今泉監督は本当に女性を魅力的に撮る。そして、監督の作品の根底にある誰かを好きだという気持ちと、成長しなくていいという考え方。セリフなんかも小津さんばりに繰り返すオウム返し。ゆるりと、けどしっかりと困らされていて、考えうる、ううん、誰も考えつかないような方法で日常の延長線上を面白おかしく描いてしまう手腕には本当に唸る、頭が上がらないよ。
遂に見た!もう嫉妬、観客という形でしか本作に関われないことが何よりもどかしい。これ作りたかったと嫉妬しすぎて、つらくなるから、一時期少し避けていたほどに…。本作の存在を知ってから恐らく1年以上、やっとの思いで実際に見てみるとだめだ、めちゃくちゃ引きずってしまう。満たされたのに虚無みたい。本当はもっといい意味であっさりと楽しめるはずなのに、不思議と引きずってる。誰にも教えたくない。映画に恋した。これはパッケージ出たら絶対BD買う。下北沢に最近ずっと行っていなかったけど、すごく行きたくなった。また足を伸ばしてみよう。ラッキーオールドサンはもちろん最高だ。そういや彼らのライブを昔見に行ったのも下北沢だったなと思い出した。
P.S. 舞台挨拶。監督の手の振り方かわいかった。昔、ヒューマントラストシネマでオープンスタッフ(?)としてバイトしていたらしく、スタッフの人がなかなかポスター立てる台の設置手こずっていたら、自らされていて素敵だった。あ〜あ、2回ともチケット取っておけばよかったな。中田青渚さんを見るのは『ミスミソウ』の舞台挨拶のとき以来、2回目だったけど、勝手にすごく感慨深いものがあった。あと、森の妖精・精霊みたいな服装ですごくすごくかわいかった。天使かと思った。
作中ポスター『愛がなんだ』、『苦役列車』『嵐電』『きみの鳥はうたえる』
今泉力哉ワールドが全開!
東京 下北沢を舞台に繰り広げられる 若者たちの恋愛や愛おしい日常を切り取った群衆劇
別れた恋人のことが忘れられない男性
憧れの俳優と浮気をするも元恋人の良さに元鞘に戻ろうとする女性
歳の近い姪っ子に恋をするお巡りさん
いつも好きになるのは既婚者という女性
役作りのために必死に太る男性
気持ち良いくらいに物事をはっきりと言う関西弁の女性
小生意気な美大生の映画監督
彼女に振られても合鍵を持ち続ける男性
市井の人々の様々な恋愛模様や恋愛観が本作を通して浮き彫りになる。
『愛がなんだ』や『his』のように「こんな恋愛があってもいいよね」「いろんな愛があるよね」的な、今泉監督の全肯定が作品にも表れているから、彼の作品ってどこか温かくて瑞々しくて包み込んでくれるような優しさに溢れている(「あの頃。」「his」も優しさで溢れていた)。
また日頃私たちの感じている言語化できない気持ちをセリフや演出で巧みに表現している。
壊されてはつくられ、時代とともに移ろいゆく街のように、我々もいつか居なくなる。
だけど確かに存在する。街も人も、恋も仕事も友情も。人々の気持ちのズレやその時に感じた喜び悲しみ、あの人の温もりや冷たさも。
古着屋、古本屋、レコード、味わいのあるカフェ、バーやライブホールなどサブカルの街 下北沢の魅力も本作を通して伝えている。本作は下北沢映画祭からの依頼で2019年に製作されたんですね。
今作も今泉監督作品でお馴染みのキャスト陣が脇を固める。
彼の作品に出演するキャスト達は、親近感があり味のある人たちが多いから、観るものにリアル感を与えより共感を生むのかも。
最後の路上で男女が集まり、わちゃわちゃするシーンは可笑しかったなぁ。最高でした!
人間関係の機微が浮き彫りにならないこそばゆさと浮き彫りになった時の凄まじさ!
大傑作です。映画の上映中、特にラストの作品の根幹に関わるようなシーンでここまで笑いが起こってる映画はこれまでになかった。大きな展開はないんだけど、確かに物語は動いている。当人達にとっては大きなことだったりもする。変わってしまった街並み。確かにあった感情。確かに今も存在している登場人物。余韻もバッチリ残る素晴らしい作品でした。
今泉監督の映画は、「愛がなんだ」から知ったにわか。オールタイム・ベストに入る衝撃的な出会いだったんですけども、何が一番驚いたって、感情のズレや人間関係の機微が浮き彫りにならなかったときのこそばゆさと、浮き彫りになった時の凄まじい衝撃をリアルに表現していること。演者の演技を信じて、言霊ののったセリフを紡いでいるなと思ったし、それをどこか俯瞰的な目線で見させてくれる撮影の仕方(ワンカット、画作り)も素敵だなと思いました。
そこから、「mellow」「パンとバスと二度目の初恋」「his」「あの頃。」を観ました。どれも好きな作品です。共感というより叫喚したくなる、生きるのって希望もあるけどしんどい部分もあるよなって思わせてくれるのが良いですね。他の過去作も早いとこ観たいです。
さて、本作。あらすじを見ただけでは、何が起こるか分からないというか、掴みどころがない感じですけども、やっぱり“存在”がテーマなのかなと思いました。
例えば、自分が発する言葉って、口にした、放たれた途端に受け手によってその解釈が分かれたりするし、時間が経つとその意味合いが変わってきたりすることってあるじゃないですか。このズレこそ、会話や人間関係の構築において、厄介だし面白いし危ういんですけども。この作品にはそうした脆さが見事に表現されています。
決定的なネタバレにならない程度に言うと、若葉竜也演じる青が穂志もえか演じる雪にフラレて、古川琴音演じる冬子に余計なことを言ってしまったり、萩原みのり演じる町子に自主映画に出演してほしいと言われたり、中田青渚演じるイハと意気投合したり、特別出演する成田凌演じる登場人物が上手いこと絡み合ってくる、最終的には青と〇〇という関係がより多面的になってくるというお話。下北沢という狭い世界にいながらも、主人公の世界は決定的に広まっていく。
途中に出てくる古着屋に買いに来る男女二人の関係、警官とのやり取り、バーでのやり取り、それぞれ見せ場があって、心に刺さる言葉があって、意味があるようでないような気もする素敵な余韻。最高です。
どの演者も人間力と顔力があるなーと思いました。どうやって見つけてきたんでしょうって人もいました。「君が世界のはじまり」でも好演していた中田青渚さんが特に良かったですね。とあるシーンでたぶん噛んじゃったところを採用してるのもリアルで良いですね。
自主映画撮影に向けての練習のシーンや、実際に撮影するシーンは、いわゆるメタ的な構造になっていくわけですけど、そこでの若葉竜也の演技の使い分けがもう本当に凄くて笑っちゃいました。
こういう人間関係や会話のズレのややこしさも悪くないなと思わせてくれるラストカット。ビターな終わり方でしたね。
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