「キュートな人達が独特のテンポで繰り広げる喧騒に爆笑させられる愛らしいコメディ」街の上で よねさんの映画レビュー(感想・評価)
キュートな人達が独特のテンポで繰り広げる喧騒に爆笑させられる愛らしいコメディ
主人公は下北沢の古着屋で働く荒川青、27歳。自分のアパートで彼女の雪の誕生日を祝っている最中に浮気していたことを告白された上にフラれるというエゲツない目に遭ってボコ凹み。さらには行きつけの古本屋で顔馴染みの店員冬子に無神経な質問をしてしまって途方に暮れているところに女子大生の町子から自分が監督する自主映画に出演してもらえないかと突然のオファーを受ける。半信半疑のままオファーを受けた青はもらった脚本を手に自己流の演技練習を始めるが、その出演をきっかけに下北沢から一歩も出ない平凡な毎日に想像もしない荒波が押し寄せる。
これはメッチャクチャ笑える作品。『愛がなんだ』のナカハラが古着屋に転職したかのような純朴な男がただボーッと読書しながら店番してたり、馴染みの店をブラブラしているだけなのにそこで出会うちょっとだけ変わった人達にブンブン振り回される様が絶妙にルーズなテンポで繰り出されるのがツボにハマってしまい、最初はそれなりに堪えていた笑いがどんどん爆笑に変わっていきます。羨ましいくらいに自由でダラダラした時間の中でワガママを投げつける人とそれらを真正面から受け止める人と軽くスウェイして避ける人が織りなすドラマが終盤でいきなり疾走する感じが『音楽』にも通じていて、共同脚本を担当している大橋裕之の持ち味もしっかり映像に滲んでいました。俳優陣がもうとにかく魅力的で、上記3人のヒロインを演じた穂志もえか、古川琴音、萩原みのりもとにかくキュートなんですが、一番光っていたのが4人目のヒロイン、城定イハ。終始マイペースな神戸弁でまくし立てるクールな不思議ちゃんの勇姿に同郷のオッサン達は全員メロメロになると思います。演じた中田青渚には今後注目していきたいと思います。