「下北沢に一度も行ったことなくても、存分にその空気に浸れる一作。」街の上で yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
下北沢に一度も行ったことなくても、存分にその空気に浸れる一作。
つい先日も『あの頃。』が公開されたばかりの、今泉力哉監督の最新作。下北沢という場所の名前は聞いたことがあるけど、どんな街なのかな、と思いながら鑑賞したので、下北沢に疑似生活したかのような映画体験はとても心地よかったです。
主人公、荒川青は飄々としているようだけど実はすごくダメな部分も多々あって、それでいながら愛嬌を感じさせずにはいられない。そんな一言で言い表すことが難しい人物像を、若葉竜也は見事に演じています。下北沢の風景と、そこに溶け込んでいるかのような住民一人ひとりを演じた役者はいずれも素晴らしく、今泉監督がどれだけキャスティングに心血を注いだのか、背景を知りたくなってきます。
本作は2019年に制作されたため、もちろん映し出される下北沢の風景にはその後の新型コロナウイルスで激変した状況を予感させるような要素は全く映し出されておらす、それが一種のノスタルジーを感じさせます。実はそれ以前からの再開発で、現在の街の姿は本作以降大きく変化しているとのこと。映像にそこはかとなく写しこまれていた建築現場は、そういうことだったんだな、と後から納得しました。
「古書ビビビ」などのロケ場所に、いつか作中の人のように巡礼したいと思わせる作品でした!
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