「聞きますよ、コイバナ。」街の上で 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
聞きますよ、コイバナ。
どんな映画かと問われれば、今泉監督の若葉竜也愛にあふれた映画、と答える。
サブカルであふれた下北沢を舞台にしたゆるい青春群像劇。時に流されるように生きる青も、別れた後にフッた男の良さに気付く雪も、どこか幸薄そうな古書店員も、求めているのは友達なのか恋人なのか曖昧なイハも、自主映画にのめり込む女監督も、いそうなのだあの町に。でもあの町のたいていの住人が得られるものは100%の満足感ではなくて、ぬるっとした「こんなもんかな」感。そんな雰囲気が、役者陣の自然体の演技とその辺で撮っているような日常感とでうまく融合していた。
で、監督の上手いとこは、姪っ子好きで悩む警官のシーンを入れたり、成田凌を有名俳優役で登場させたり、ストーリーをダレさせないところ。突拍子もないシーンに思わせといて、ちゃんと伏線を用意している。かみ合わない会話の応酬からは、惰性で生きてるようでいながら、恋愛だけはちゃんと本気で感情をさらけ出せる熱さ。そう思うのは、自分の年齢のせいなんだろうけど。
そして思い出してしまうのは警官のセリフ。「やっぱ言わないと次いけないっていうか、どう思う?」なんでだろう、ここで僕は泣いてしまった。今泉監督の術中だな。
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