「不思議な感覚」だってしょうがないじゃない Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
不思議な感覚
本作品は、発達障害の人に「8050問題」が起こってしまった後の、一つのケーススタディということになるのだろう。
良い勉強になった。
まことさんは、会話のやりとりには全く問題がないし、おびえたり攻撃的態度を取ることもないし、発語に難はあるものの妄言するわけではないし、好んで家に引きこもりたいタイプでもない。
納得いかないことがあるのか、同じ動作を繰り返すことはあるが、別に問題があるわけではない。
どこか不思議な“マイペースに見える”人である。
しかし、自分の生活をマネジメントしきれないという問題を抱えている。
本作品は、そういうまことさんに、周囲の人々がどのように関わっているのかだけでなく、監督自らが参入して記録を続ける。
暖かい人もいるし、やむを得ないとはいえ、気の毒な扱いを受けるシーンも出てくる。
ドキュメンタリー作品に、(a)意図や思想を明確に示すものと、(b)映像を出して観客に自由に考えさせるものの両極があるとすれば、本作品は良くも悪くも後者なのか。
あるいは、“結局は、適当な施設に入ってもらうしかないのです”という結論なのか。
あるいは、もっと“露悪的”な作品に作れたのかもしれないが、そこは抑えたのか。
この映画もどこか不思議で、妙な均衡の上に立っている感じがある。
何をレビューしていいか分からない、“不思議な感覚”を覚える映画だった。
監督は、今も親戚としてまことさんと関わっているという。
当のまことさんは、この映画を通じて、人と関われたのが嬉しかったそうだ。
とりあえず喜んでいるとのことなので、その点は良かった。
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