「裏ポンポさん、カルト風味」ディアスキン 鹿革の殺人鬼 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
裏ポンポさん、カルト風味
鹿革ジャケットを手に入れたばかりに変態猟奇殺人、オマケでもらったビデオカメラを駆使してジャケット中心に撮りまくるジョルジュ。くそっ、悩殺だ!などとジャケットから帽子、ブーツ、パンツ、手袋へと鹿革愛も偏執になるが、それ以上に凄いのが過激な無差別殺人。
妻と別れる決意をし、金は銀行口座にあるはずだと言って、前金もないため結婚指輪を差し出し長期宿泊するジョルジュ。とにかく魅了された鹿革と自分を撮影するだけなのだが、ふと寄ったバーのドゥニースと会話して「映画を撮ってる」と出まかせを言う。彼女もまた映画好きで、個人的趣味で『パルプフィクション』を時系列通りに編集したとも語るのだ。そこから、本格的に他人のジャケットを漁り、映画の撮影だから「生きている限りジャケットは着ない」と喋らせ、トランクにジャケットを入れていく。金もないのに、ジャケット狩りだけは執念を感じる。
中盤からはドゥニースが映画を褒めたために本格的撮影(とはいえホームビデオカメラ)をするのだが、徐々にエスカレートして扇風機のプロペラを使い連続殺人鬼と変貌していくのだ。そりゃ、モキュメンタリーじゃなくてスナッフムービーですよ!ドゥニースの心も映画を完成させたいがために変態製作者へと変貌するのだった。
フリンジ付きのカウボーイスタイル。悩殺され鹿革に惚れていく変態ぶりも面白いけど、それがドゥニースにも感染していく様子がとにかく最高。広告映像も撮りたいから「もっと血を!」などと、明らかに主導権が移っていく様子が絶妙なのです。全体的にも野生の鹿のカットが挿入され、バカな二人を俯瞰しているかのようで、シュールなエンディングも素晴らしかった。
深く考えると、ジャケットが台詞を喋ったりすること、脚本がないのによく続けられたなぁという疑問、猟銃で自殺?という点まで粗はいっぱい。それも山の町という閉塞感漂う雰囲気や、ぽつんとある映画館にも侘しさを感じるため、警察もすぐには動かなかったのだろうと勝手に解釈してみる・・・