「チクショウ、悩殺だ…」ディアスキン 鹿革の殺人鬼 KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
チクショウ、悩殺だ…
へ、変態だーーー!!やったー!
意味不明で理不尽で、発想の勝利でしかない。紛れもなく変態。
完全にシュールコント映画。
軽い笑いと常に引かれる興味、ドキッとする殺人に溢れる楽しい作品だった。
フリンジブリブリで超絶ナイスな鹿革のジャケットを手に入れたジョルジュ、「世界で唯一のジャケット」にするため「世界で唯一ジャケットを着る人」になるため、映画を撮り始める…なるほどわからない。
貴様のジャケット奪うため!カメラ片手に西部劇のガンマンさながら換気扇のプロペラふるって殺しまくる姿のまあなんとかわいいこと。
行き当たりばったりすぎる不器用おじさん、愛しいだよ。
鹿革アイテムにうっとり惚れ惚れする様子のこれまたプリティなことよ。
もう絶対笑っちゃう。
一つまた一つと、増えていく鹿革アイテムによりビジュアルも西部劇風に変身していくのが楽しい。
武器精製の方法も斜め上だし、季節はずれのスイカ食べたくなるし。
上達する撮影テク、消える倫理観、テンポ良い殺人シーンとほんのりゴアな描写にキュン。
どんどんキャラクター化していくジョルジュ。
ガチなのかフリなのか、寄り添うドゥニースの意味不明さも面白かった。
人格を持ったジャケットがだんだん表情豊かに見えてきたのは私だけだろうか。
ラストの方なんて、先の見えない夢とジョルジュの情熱に挟まれて疲弊しているように思えた。
あるいは、おバカなおっさんを操って世界征服を企むしたり顔か。
ええー私も好きになっちゃう。どうしよう。
少年の目は何を表していたんだろう。
時代背景はどのあたりなんだろう。
どうしてあんな呆気なく終わったんだろう。
険悪な妻との間に何があったんだろう。
ペンションの受付おじさんに何が起きたんだろう。
多い余白をムフムフとにやけながら自分なりに想像して埋めていく楽しさ。
秋も深まってきた今この季節、ちょうどジャケットくらいの羽織りが欲しくなる今この季節に観るにぴったりな映画だった。
肌寒さを感じるくらい明るくカサカサしたトーンの映像と、フレンチポップな音楽が好き。