「どん底の下に村西じゃなく自分の歌があった」リスタート 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)
どん底の下に村西じゃなく自分の歌があった
監督と脚本は『ドロップ』『漫才ギャング』『サンブンノイチ』『Zアイランド』の品川ヒロシ
岩手ではたしか上映されず宮城県では3スクリーンしかないミニシアター系のフォーラム仙台1館のみでしかも上映期間はわりと短かった
劇場で観る予定だったが観れなかった
映画館で鑑賞した人はわりと少ないかもしれない
そのわりにまさかの良作
バックが吉本で人気お笑い芸人の品川が監督を務めた映画にも関わらずちょっと可哀想な扱いに感じた
吉本が関連するあちこちのテレビ番組で大々的宣伝し全国のイオンシネマで隈なく上映するべき作品だった
シンガーソングライターを目指し北海道から上京するも地下アイドルに甘んじ挙げ句の果てにオトナの恋愛スキャンダルでクビになり地元に戻る話
下川といえば下川辰平しか思いつかない
ありふれた話でどれだけ観る側を惹きつけるか監督の腕が試される
主役をはじめ演技の経験が乏しいであろう若い出演者に演技指導するおしゃべりクソ野郎を想像するだけでなんだか胸糞悪くなる
ヒロインの歌唱力に説得力がある
クライマックスのライブが最高
エンドロールも彼女の歌
彼女の歌を聴いてこの映画を撮ろうと思ったのかもしれない
彼女の歌の力で心を一方的に寄り切られた形
あんなに田舎ではとんがってたのに典型的な地下アイドルをやっている様は思わず笑ってしまった
菅野美穂も仲間由紀恵も満島ひかりもアイドルグループの一員だったが彼女たちは俳優業
これだけの歌唱力がありながらいくらなんでもありえないが椎名林檎だってホリプロのオーディションに合格していたら同じような目に遭っていたかもしれない
お父さんの話がずれてシンデレラハネムーンの件は面白かった
だけどゲロや鼻くそで笑える年齢ではなくなった
拳に推しの名前のタトゥーを入れちゃう強面に強いストレスを感じた
もちろんマスコミは大嫌いだがアイドルオタクはもっと嫌いだ
ヒロインも母も男に騙されたらしい
外国人の父は本国に妻子がいたという設定はハリウッドスターのスティーブン・セガールを彷彿させた
帰れる地元がある人は幸せ者だ
ジブリじゃない方の『カントリーロード』とジブリの『カントリーロード』のあいだくらい
家族や仲間が温かい
知っている出演者が少ない
ヒロインの両親役の中野英雄と黒沢あすか
実家は民宿という設定
友情出演かバーターか知らないがキングコングの西野や品庄の相方が地下アイドル関連で出演している
地元の飲食店で絡んでくる酔っ払いにデブの小杉は他の芸人より出番が多かった
ヒロイン未央を演じたのはフォーク系のシンガーソングライターのEMILY
写真家で未央の幼馴染にSWAY
未央の異父妹に朝倉ゆり
黒沢あすかがマスコミを追い出すときの怒りを噛み殺しワナワナする芝居が好き
なんとなくSWAYが成宮寛貴っぽかったがもちろん別人だった
『私はいったい、何と闘っているのか』で長女の婚約者として登場した人だ
田舎まで未央を追いかけるマスコミ関係者のリーダー格が斎藤工っぽかったがやっぱりこちらも似ても似つかない別人だった
歌で自信を取り戻した
だから撮影OK
ラストシーンも良かった
隠れた名作