「犬というスコープを通して見えてくるもの」再会の夏 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
犬というスコープを通して見えてくるもの
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いろいろなメッセージの込められた作品だと思う。
ランティエと、犬、モルラック、そしてヴァランティーヌとの対話のなかで、戦争からその後の事件までの悲しい事実が明らかになっていく。
愛国心や正義を煽られるが、前線で戦う兵士には、戦争の目的は、実は曖昧だ。
モルラックは、和解のための行進で、敵に噛み付いて、戦闘に発展させてしまった犬に、前線で戦う自分を重ね合わせたのではないか。
モルラックは、当初、状況を理解できなかった犬に腹を立てつつも、実は命令に背いているのは自分達であって、犬は忠実だったことに気が付いた。
そして、終戦、帰還。
原題タイトルの、「(犬に掛けられた)赤い首飾り(勲章?)」の赤は、フランス国旗の友愛を示す色だ。
フランスの田舎の村人たちのドイツ系ユダヤ人であるヴァランティーヌに対する偏見、人付き合いの下手で頑ななモルラックへの偏見、モルラックのヴァランティーヌに対する誤解なども内包し、ランティエは地道な調査を続け、取り返しのつかない命令につき従うだけだった戦時の自らの行為を省みながら、モルラックを解放しようと努力を続ける。
そして、変わらず寄り添おうとする犬。
しかし、ヴァランティーヌも変わらず、モルラックを待ち続けていた。
勲章の赤は、フランス国旗の示す友愛の赤のはずだ。
人は許し合いながら、友愛を育むのではないか。
犬というスコープを通して、人間を見つめようとする寡作だと思う。
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NOBUさんのコメント
2020年1月11日
今晩は。
切れ味鋭いレビュー、いつにも増して素晴らしいです。自分のレビューを消したくなります・・。
けれど、拙文を読んでいただいて今作を観られたのであれば、存外の喜びです。