「編集は本当に面白い」映画大好きポンポさん 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
編集は本当に面白い
映像の編集ってやってみると本当にすごい面白いものだが、映画のメイキング映像でも、映画制作の舞台裏を描いた内幕ものでも中心に取り上げられることがすくない。スタジオで延々と作業するものなので、画的に地味だからしょうがないんだろうけど、本当はめちゃくちゃ面白くて、映像制作の醍醐味なのだが、この編集の面白さを存分に伝えてくれる作品がついに出てきた。物語の前半こそ撮影現場のエピソードがあるが、映画の後半は編集と金策の話になっていく。同じシーンでも編集次第で全く別の印象のシーンとなることが、わかりやすく提示されるが、それ以上に本作全編が凝った編集にあふれているのも良い。
僕が好きなのは、ポンポさんとアランがカフェで向かい合って座って予算の話をしているシーンだ。オーソドックスなつなぎだが、実に順番が的確だ。2人が向かい合っているのを2ショットで捉える、奥には大きな窓があって強い西日が差し込んでいるため、2人は逆光気味で暗く映っている。2人が困難な問題を抱えていることを示唆しているカットだ。そして、2人の正面カットを切り替えしてつなぐのだが、西日によって顔の半分が影に覆われている。2つに分断された顔が、やるかやらないのか、2つの選択肢の決断をする場面であることを伝え、やると決めた2人を今度がカメラが窓側に入り、2人の未来を暗示するように明るく照らしている。このつなぎの順番を逆にしてしまうと、物語の展開は理解できても、伝える力が弱くなるだろう。
このように、つなぎ方にもちゃんと意図がある。素材の強さを何倍にもしてくれるのだ。
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