「この映画に「も」決定的に足りないものがある!」映画大好きポンポさん みりぽんさんの映画レビュー(感想・評価)
この映画に「も」決定的に足りないものがある!
6月のアニメ映画と言えば毎年密かに楽しみにしているものがある。
ゴールデンウィークと夏休みの谷間。
行楽シーズンとは全くの無縁のどんよりとした梅雨曇のさなか。
いつしかこの時期の個性的な作品が密かな楽しみとなっている。
大型タイトルを避けるように粒ぞろいな秀作が集まるのもこの時期。
「ポンポさんにおまかせ!」そんなキャッチーなセリフとインパクトのあるキャラで予告編を見ただけで期待が膨らむ。
まさに雲の隙間から一筋の光のようにひときわ異彩を放つ作品である。
ムビチケと特典を手に入れ小雨降る中映画館へと急ぐ。
見終わった感想としてはとてもいい。
いい映画を見たな、見てよかったと思える作品だった。
興行的にも満足の評価が得られたのではないかと思う。
以下戯言。
ポンポさんから映画のうんちくを聞けたのはよかった。キャラとしては最高。こんな貫禄のある女の子が男顔負けに映画を語るのはアニメ特有の表現である。
しかし見終わった後ふと疑問に感じることがあった。
主人公は誰。
ポンポさんが映画を作るのではなかった。あくまでも「プロデューサー」。
物語を動かしたのは監督となったジーン。そして銀行屋のアラン。
この二人の活躍でハッピーエンドを迎えている。
監督として様々な困難を乗り越え、作品に情熱を注ぐジーン。
冴えない青年として頼りない一面がありながら、日々の努力は怠らない。好きなものには徹底的に取り組むタイプ。
このキャラ作りはとてもいいと思う。しかし、彼の才能を目覚めさせるきっかけが乏しい。
そのトリガーとなるのが主人公であるポンポさんの役割ではないのか。
そして彼に触発されて後半の美味しいところを全部持っていったアラン。
彼もまた勉強はできるが仕事ができないという欠点を持つ。会社に失望し仕事を辞めようかとすら考えていた彼がいきなり大仕事をやってのけるのも、本来はポンポさんがきっかけとなるべきだろう。
編集メイン。
銀行屋メイン。
ポンポさんはあくまで脇役
こんな絵面で、肝心の主役が誰なのかわからない。
どうしても角川が作るとオタクのコンプレックスみたいなものが前面に出過ぎてしまう。冴えない青年、仕事に悩む青年、うちの視聴者層はこんなタイプのオタクが多いだろうから、そういった人間が活躍する話にすればウケるに違いない。そう思ってはいないだろうか。
王道でいいのに。
冴えないオタクキャラが輝いて世に認められる、それはそれでいいし努力が報われるのは悪い気分はしない。しかしあくまでも脇役キャラが前に出すぎてしまうと物語のメッセージが変わってしまう。
あくまでもポンポさんが主人公で、ジーンが行き詰まってしまうところを喝を入れるとか、銀行を回って資金を集めるとか、ポンポさんに触発されて周りの人が変わっていく様がこの物語には必要なのではないのか。
せっかくこれだけカリスマ性のある輝いているキャラクターなのに、どこか霞んでしまったのがとても残念。
彼女はきっかけを与える重要人物でないと。
幼い女の子が世の中を動かす超ミラクルを起こす、というのが私の求めていたもの。
もちろん初監督に抜擢したジーンがいきなりアカデミー賞というのはミラクルである。しかしそこには彼のたゆまない努力の賜物であってポンポさんは存在しなくても変わらなかったように映る。
このシーンがなくても成立するんで……
むしろ映画が失敗してもみんなが頑張ったからよかった、みたいな展開でもよかったのでは。
この作品には決定的に足りないものがあるんです!
これはメタフィクションなのか。
とてもいい作品だと思ったが、これではジーンとアランのBL物語になってしまう。
とても恵まれたキャラクターから残念な脚本という、少し悔しい思いが残る作品だった。