「対話」2人のローマ教皇 TSさんの映画レビュー(感想・評価)
対話
対話劇である。
ほとんどベネディクト16世とベルゴリオ枢機卿2人の対話の話。
事実に基づく話かどうかはわからない。本人達に取材なんてできるわけないから、状況証拠からの推測に基づき創られた創作物であろう。しかし、まるでドキュメンタリーを観ているかのように、リアリティと説得力がある作品である。
人間、話せば分かるというほど簡単ではない。
教義の捉え方、教会運営の方針の異なるベネディクト16世とベルゴリオ枢機卿は、最後までその信念で折り合うことはなかったのだろう。
しかし、対話を重ねる中で、2人の間には信頼関係が構築された。孤独であったベネディクト16世にとって、心を開ける相手は対立する者。彼は、最初から後継候補として目を付けていたとしか思えない。ベルゴリオ枢機卿の過去を調べ、バチカンに呼び寄せた。自分の目で確かめるために。
対話によって相手を知る。思想信条という軸ではない、別の軸で人を見極める。
人の上に立つ者に必要な資質とは何か。
危機を救う者に必要な資質とは何か。
世界的宗教教団トップという特異な役割に纏わる話だが、その本質は、宗教教団でなくても企業でも当てはまる話のように思える。
どちらも人間がつくった組織だ。大きくなれば、派閥ができる。権力闘争がおきる。駆け引きが発生する。それらを乗り越えてまとめていくことは並大抵のことではない。
権力者は孤独だ。権力者は弱音を吐けない。権力者は完全ではない。
ワールドカップのサッカーシーンはよかった。
お互いが母国を応援して戦う。しかし、楽しそうだ。同じ土俵で楽しんでいる。
違いを認める。相手をリスペクトする。方法論は違っても大きな目標は一緒であることを確認する。そして解決策を模索する。
本当の対話とはかくあるべし、を教えられたような気持ちになった。
アンソニー・ホプキンスとジョナサン・プライスの名演が光る。