「焦点が絞られていていい」Red R41さんの映画レビュー(感想・評価)
焦点が絞られていていい
主人公トウコの心情を描いた作品。
タイトルの「Red」は多義的だ。
赤という色の示す意味 制限を超える荷物を積んでいる警告の旗 その対象は個人かそれとも全員か?
トウコとクラタの間に落ちた赤い旗 それをまたいでクラタの車に戻るトウコ。電話ボックスの電話の上に捨ててきた結婚指輪。一線を越えた二人。
この作品は女性の幸せがどこにあるのかなどという昔じみた感覚はなく、恵まれていながらも不自由な生き方をしてしまっている女性にとって、本当に選択すべきことは何かを問いかけている。
物理的設定も面白い。愛する娘 優しい旦那と裕福な生活… それと天秤にかけるのが昔好きだった男 悪性リンパ腫を患う余命宣告された男。
コダカがトウコや彼女の身の上、クラタのことなどを見抜いていたように、クラタも好きだった女性トウコのことも家庭内の事情も見抜いていた。
だから新潟まで車を走らせたのだろう。大雪のため、飛行機も電車もすべて止まってしまっているにもかかわらず、タクシーでも帰って来いという夫。
下道で帰りながら途中で見つけた電話ボックスから自宅に電話すると、「どうやって帰っているの? 君のことが心配だ」などという夫の言葉に腹が決まる。
当然一番気がかりなのが娘ミドリのことだ。
しかしミドリが今後育つ上で不十分なものは何もない。
これ以上村主家には居られない。
彼女がそう決断するまでのことを描いている。
Redとは、今までずっと赤旗状態で生きてきたトウコのことを指しているのかもしれない。
腹が決まったことでその旗が取れ、赤旗ではない場所、好きな男の場所へ行くことができたのだろう。
その時トウコはすべての犠牲を払うことになっても、自分自身の心の自由を選択できたのだ。
一昔前の映画にはなかったものだろう。
生きるとはいまであり、そこに先のことなどない。
自分の心だけに従い、夫や村主家、娘のことさえも自分の心よりも下に据える。
自分の気持ちを何よりも優先するという思考は、これから主流になっていく思考だと思う。
指輪を捨ててクラタの車に戻ったトウコにはどこかすっきりした雰囲気が漂っていた。
そして、クラタが死んだ後も、トウコは娘にせがまれても、元に戻ることはしない。
最後のシーンは、あの日トンネルを抜け雪の世界から抜け出したとき、美しい朝日が二人を包んだシーンを、トウコが思い出したことで作品が終わる。
あの日の誓い、そして二人で見た朝日。
自由を選択した時、初めて訪れた光景。
「そこ」にしか自分で創造できる未来はないのだろう。
良い作品だったと思う。
コメントありがとうございます。
個人的にとても好きな映画です。
ジェフ・パックリーの「ハレルヤ」がとても雰囲気を上品に
盛り上げていて、そして妻夫木聡のファンなのでとても
没入して魅入っていました。
R41さんは男性でも、搭子に批判的でなく自立を応援するスタンスで
とても嬉しかったです。
子供を女性が育てるだけではない選択肢もありますね。
自立して陰から精神的に支えることだって、会うことだって可能ですね。