「キャストはいいが」Red Masuzohさんの映画レビュー(感想・評価)
キャストはいいが
今週は観たいものがないのでキャストに惹かれて鑑賞
決算忠臣蔵でも渋みを活かしていた妻夫木聡
アルキメデスの大戦で気に入った柄本佑など
夏帆は不倫に揺れる若妻と言う役をどうこなすのかも
興味ありました
物語は大雪の中二人で電話をかけ終わった女と
その後車中にいる男女のシーンから始まります
優しいが仕事中心で気の回らないの商社マンの旦那と姑と
就学前の一人娘のいる上流家庭で専業主婦を務める村主塔子(夏帆)
ひょんなパーティーで10年前交際のあった鞍田秋彦(妻夫木聡)と偶然遭遇
その場で激しく燃え上がり冷え切っていた劣情が蘇ります
塔子は鞍田の手引きで鞍田の務める設計事務所に誘われ
当初は反対した旦那の了承も得て仕事復帰しますが
そこで心情をすぐ見透かしてしまう小鷹淳(柄本佑)も
出会い塔子は女性としての充実を取り戻していきます
塔子はおしとやかな主婦という感じではなく
割と肉食系というかズケズケ食い込むタイプで
小鷹からは「お前案外エロいな」と言われてしまいます
小鷹は本当にこの映画のキーポイントを明確に口にしていきます
鞍田は小鷹と塔子が打ち解けていくのもそう意に介さず
仕事に打ち込んでいますがその様子が気になる塔子は
ある日仕事で同行したときに鞍田の自宅で激しく抱き合います
このベッドシーンが妙に長回し…なのですが原作でも
だいぶ割かれているそうです
普段はボケッとした表情で幸薄そうな感じでいますが
この抱かれているときの夏帆のイイ女に豹変する感じが
女優の底力を感じさせます
そのピロートークで鞍田が重い病を持っていることを聞かされます
もう治ったのかという問いにもハッキリとは答えません
その後塔子は優秀なので正社員になりますが仕事が面白く
なってきたところで迎えに遅れた所を娘がその間に
高所から転落しケガを負い塔子は仕事に復帰したことを
旦那に叱責されます
ここで気になったのは姑がいびり倒すと思いきや
どちらかというと塔子庇ってしまうところがちょっと「?」でした
これでは塔子が結婚家庭を放り出して不倫に走る動機が
強くならない気がしました
結局塔子が求めていたのは燃え上がる劣情といった
刺激以外の何物でも無かったのでしょうか
この辺から塔子への共感もそんなに出来なくなってしまいます
まあもうしてない人もいるでしょうけど
そして正月
無神経な事ばかり天然で聞く旦那の父親に
ウンザリしながら母子家庭の塔子はイヤイヤ娘の顔を見に来た母親に
「父親が蒸発したのもウソついてまでこんな家庭にいて楽しいのか」
とハッキリ言われてしまいます
そして仕事場に行くと鞍田が入院しており同行する予定だった
新潟へは小鷹と行くことになりますが大雪で帰れなくなり
それでも帰れと行ってくる旦那にムキになり無理矢理帰ろうと
外に飛び出したところに鞍田が現れ
冒頭の大雪に車中で二人でいるシーンに繋がってきます
正直こういう回想と今の繋ぎ
あんまりうまくなくどっちのシーンかわかりづらかったです
冒頭だけなら良いのですがたびたび挟み込むので
過去話で車中で二人でいるシーンとダブります
作り手は雪が降っているかそうでないかで区別できると
思ったのでしょうがベースノイズとか絵の角度とか
一緒なんで思いのほか分かりづらい気がしました
鞍田が回想で病気を打ち明けた後すぐ今喀血したり
ブツブツ切るので今の状態がわかりづらい感じがしました
塔子はそこで電話で(そもそもなんで公衆電話だった?)
旦那に「あなたにとって結婚とは何か」と聞くと
「人生で唯一愛した女性と共にいること」と旦那は答え
塔子はその電話ボックスに指輪を置いて鞍田との逃避行を決めます
ここがね
塔子は旦那ともう一緒にいる資格は自分にはないと言う意味で
指輪を置いたんでしょうけどどうでしょう
観てる側には全部投げ出したようにしか見えないからもう
この女ひどいなーとしかみえないんですよね
このシーンの前に旦那と大雪の中帰るの無理だの喧嘩してる塔子に
小鷹が「なんで結婚したの」と聞きますがまさにそうです
塔子は「小鷹さんにはわからない」と答えますが
小鷹さんならわかりますよ
で結局鞍田は病状が悪化しますがそのゴチャゴチャのせいで
いつ抱き合ってるのか分からないベッドシーン
葬儀
旦那と子供との決別
鞍田の車を運転する塔子にもたれ掛かる鞍田
正直いつエンドロールになってもおかしくないシーンが
パッパと暗転して終わっていきます
終わり方もしまりがなかった
塔子に共感させないのは作り手の意図だったのか
あるいは逆に共感させようとしてこうなのか
よくわかりませんが自分は前者にしか受け取れなかったので
じゃあ女性の自立心のために結婚否定なのって
思ってしまいます
別にどっちでもいいですがテーマ的には独善的すぎて
あまり得られるものはなかった印象です
どこを重視してみるかに依りますが
キャストは十分良かったですからちゃんと観れると思いますが
それだけにもう少し構成を頑張って
しっかり演技させてあげて欲しかったと思います