「料理できなかった鯛って感じ」“樹木希林”を生きる MST HLOさんの映画レビュー(感想・評価)
料理できなかった鯛って感じ
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初見後に友人と顔を見合わせて一言『なんだこれは……』と喫驚。死を目前にした不世出の女優樹木希林さんの捌き方としてはあんまりだろうと憤りすら感じました。
たとえは悪いかも知れませんが、せっかく釣った大物の鯛をあまり腕の立たぬ板前が調理したという感じを拭えませんでした。身は潰れ、触り過ぎて体温が刺し身に移り、分厚く切られた刺し身など食べる気がしません。まだまだ残った部位がたくさんあるだろうに……。
それでも前半が面白かったのは樹木希林さんの『サービス』があったゆえでしょう。樹木希林さんが『サービス』をやめてしまった後半は、監督の葛藤や逡巡のドキュメンタリーを見せられているようで一気に冷めてしまいました。最後は樹木希林さんの前で泣き出すような音声が入っています。奥さんとの確執の答えを樹木希林に接することで得ようと思われたのか。
他の方が書いてらっしゃるように、本作を世に出すことで確かに監督は大恥を世間に晒すのかも知れません。しかし、それでもお金を払ってまで観る価値があるかと問われれば、残念ながら甚だ疑問符を付けざるを得ません。
この監督がこの先いろいろな経験や学びを積み重ねられて再びこの映像を再加工することがあれば、もう一度拝見してみようと思います。しかし、現時点では他の監督にお願いしたかったなあというのが正直な感想です。
最後に……いかにもNHKといった感じの陳腐なラストシーン。最後に砂糖をまぶして誤魔化しましたという感じのエンディングで萎えました。
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