痛くない死に方のレビュー・感想・評価
全69件中、41~60件目を表示
映画は都合の良いタイミングで逝けるけど
理想の死に方ではあるが、現実味がない
介護したことがある家族視点からしたら、いつか終わると分からない終末期を自宅で行うことは容易じゃない。
私の祖母も認知で自宅介護をしているけど、週に3回のデイケアにお世話にならないと風呂すら入れない。
家で完璧に最後を看取るなんて、本当に理想郷だと思う。
ひどい言い方かも知れないけど、生きている人の負担にならない最後ってあると思う。
病院で管だらけだろうが、自宅で介護疲れだろうが、最後を看取る家族の決断が優先されるべきだと思う。本人の意思よりも。
それでも自宅で死にたいというのなら、それなりの蓄えや手続きを頭のしっかりしているうちにするべきだし、家族の人生を自分の人生に巻き込めるだけの関係性を築いていないと難しい。
ましてや、共働き当たり前の世の中で、いったい誰が老人の最後を看取るのか。
最後まで命を長らえさせようとしてくださる医療関係者の方や終末期医療に関わる看護師さんや介護職の方々には本当に頭が上がらない。
映画のストーリー的には前半戦はかなりしんどい。
黙々、淡々と介護の様子が描かれる。
後半からは何故か陽気になんちゃって短歌とか詠み始めて、あんな生きるか死ぬかの瀬戸際で鉛筆なんか握れねぇよと思わず突っ込みたくなる。
我が家も一度、キチンと家族間で今後の話をしなくてはなぁ。とひと事とは思えない、なんとも複雑な後味が残る映画でした。
痛くない
患者と家族メインなのかと思いハンカチ握りしめて観たのですが、医師の成長がメインで、泣かなかった。
ジーンとはしました。
師匠が義父の奥田瑛二さん
患者役の宇崎竜童さんとても良かったです!
緩和ケア、在宅医師によって明暗わかれるなぁという学び。
痛くない死に方なんてないよなぁ
自分はどうやって死と向き合うのか考えさせられる映画です🎞
観てよかった。
ここまでリアルに死を描いてもらったら、どう死ぬか?という問いに本気で向き合うことになり、と同時に、どう生きるか?という問いにも本気で向き合うことに。
厳しくて、切なくて、優しくて、愛に溢れる素晴らしい作品でした。
カタログ
最初の下顎呼吸、喘ぐ呼吸の画面は、見ていて苦しかった。そうだ、確かに死にゆく時の呼吸だった‥
人は誰でも死んでいくモノだ。銃で打たれて死ね瞬間、御臨終ですと、死んだ瞬間。
人が死んでしまった後しかメデアは見せてなかったと思う。こんな風に、病で死んでいくあり様を見せてくれた事は今様だとも思う。
国民の三分の一は、高齢化していて、国も在宅医療を推し進めている、週刊誌だって墓じまいとか、終活とか特集して、最後をどう終わらせていくのかが問われている様だし‥
この映画は、自宅で死ぬ事の見本、豪華なフルカラーのカタログの様だった。だから、介護力としての家族側の苦悩は意外とあっさりしていた。
カタログだから、こんな風だったらいいなぁ、こんな先生に看取られたいなあと、期待をしてしまう。自分の最後は、どう終わるのか自分でわからないけれども、予後が決められた場合だったら可能性ありかもと。もっとも、介護する側が確立していればって事だけれど😢
終末治療を拒否したおじいさん役は、熱演だった。全共闘世代の夫婦役の、大谷直子の台詞回しや、ちょっとした夫婦のやり取りが光っていた。
自分自身の終末医療について考えてしまう
人は自分が治癒の見込みが無いなら、自宅で穏やかに逝きたいと願う、その気持ちは解ります。でも、自宅はバリアフリーにして、介護用ベッドも必要だし、家族には介護の負担がかかるし、となるとけっこうハードルが高い。家族の同意は得られるか・・・家族は難しい選択を迫られ、またそれが正しかったのか、後々悔んだりします。もちろん、うまくいった例も描きます。しかし、都市部ではなかなか難しいでしょう。
本作では、病院を冷たくて機械的な所のように描写している感じが気になりました。それに、在宅医療と病院の連携って、全く無いものなんでしょうか。病院は基本的に延命したがるのかもしれませんが、病院だって患者の希望を聞いてくれると信じたいです、私としては。
「まず自助、そして共助、公助。」と去年政府の方針を聞いて、本当にがっかりしたんですよ。それ、言っちゃうの?って。自助なんてしたくても出来ない人がたくさんいるのに。共助なんて、分かるようで分からない、何をイメージしているんだか。経済状態、家族関係、環境で、格差は広がるばかりですよ。その上医師のモチベーションによって生死が左右されるなんて、どうすりゃいいのさ。
うーん、グチり出したら止まりません。あの先輩医師のような方が居てくれると嬉しいです。ただあのミーティングの患者の情報はあそこまで覚えなくてもいいと思います。スタッフが大変過ぎます(笑)
坂井真紀さんの演技は好きです。あと、父親役の方、すべてさらけ出しての熱演は迫力がありました。
ためになった
・在宅医療の知らなかった事を色々と知ることができて為になったと思った。個人的には免許更新の時に観るような起伏の少ない落ちの見えたストーリーを超豪華な俳優陣で作ったような感じがした。とはいえドラマとしての盛り上がりとかがほとんどないように感じたけど、テーマもかなりきついのでこれぐらいが丁度いい気がした。知らなかった事がすーっと入ってくる感じが良かった。
・その中で印象深かったのが在宅医療を選んだらもう病院とは関われなくなるという感じだった。状況次第でいつでもどちらかを選択できるのかと思ったら、どちらかを選択したらもう戻れないという感じに見えた。特に在宅時に喉に餅をつまらせて救急車を呼ぶ呼ばないでざわついて、呼ぶなと言われた後、管をつけられるだけだから入院させられるっていう感じに驚いた。誤嚥性肺炎が食事よりも寝てる時のタンが原因が多いっていうのには驚いた。
・主人公の河田が在宅医療に対してやる気がない中、大貫さんに貴方に頼んだ事を後悔していると、心が痛いなどきつい事を言われた後、在宅医療への姿勢を改めるのが早いなと思った。やる気がなかったんなら、そういわれたら投げ出しそうだなぁと。酒飲んで呼吸の映像観てたりしてたし。とはいえ、そこを長々とされてもなぁとも思ったりする。もちょっと悩むシーンが観たかった。
・とても暗くしんどい話かと思ったら、そうでもなかった。
・前半の父親の亡くなるシーンと入院の際のがん難民の話や、後半に亡くなる直前の様子の説明で、あぁやっぱり亡くなるんだよなって感じがきつかった。
・映像の物語のおかげで一度疑似体験できたような感覚になれて良かった。
・あれだけ寄り添って在宅医療をしてくれる人はどれぐらい居るんだろうと思った。むしろ、ほとんどが前半の河田みたいな人なんじゃないかと思うと苦しくなった。私生活がほとんどないような仕事で頭が下がる。
ありがとう、下元史朗。
下元史朗が死を全て見せてくれた、痛くて苦しくて恥ずかしいけれどそれが人間の死なんだろう。
見ていて本当に苦しかった。
初めてちゃんと死とぶつかった主人公が向き合っていく成長物語は単純ではあるがその成長はとても大きくて難しいことが映画の中にあった。
この映画に出てくる方法論が正解ではない。
間違いでもない。
映画は一定の距離感があって流石の高橋伴明だと思った。
こういういい映画がちゃんと評価されて広がって欲しいと本当に思う。
舞台挨拶回で拝見
とっても献身的に父の面倒を見る智美。
山盛りのそうめんの、1本だけでも食べてもらえたらとゆう健気さにびっくり。
「家で死にたい」と言うのは、看取ってくれる家族が居て言えることで、一人暮らしじゃ無理よね…?介護施設で看取ってもらう事になるのかな。介護士も辛いだろうな〜とか…おっと自分の心配は置いといて(でもこうゆう映画観なきゃ気づかない問題だから、この機会に考えとく必要はある)。
長尾医師の舞台挨拶の回を拝見。忙しいでしょうに関西からいらして、満席で良かった。素敵な声でした。パンフというのか『 映画読本』と銘打った書籍がとっても充実した内容で氏の仕事への情熱を感じました。熱源のような力を持った人ですね。
河田医師はロールモデルを見つけることが出来て、患者に寄り添う医師になって来たみたい。こんな医師が増えると良いな。
看取るということ
在宅医療の現実を描いた映画ということで、大変興味深く鑑賞しました。
著者の長尾先生挨拶の回でしたので、満席でした。
物語の前半は、終末期患者も家族も大変厳しく、
また柄本佑演ずる在宅医も、医者としての姿勢が厳しい中で、どちらも苦しい最期が描かれていました。
患者は一般な治療を拒否し、家族は日に日に悪くなる患者の看護に生活を心を疲弊していく。
頼みの在宅医看護師も連携悪く、患者さんをモノとしか
見ていないような感じで…
患者役の、壮絶な苦しむ演技を見て、痛くない最期を迎えたいと感じました。
そうなると合法な薬品投与で、意識混濁の中最期を迎えるとは思いますが。
後半は、在宅医の先輩との研修で成長した、柄本在宅医が、前半とは別人のように生き生きと患者と向き合っていきます。
在宅医療に従事する若手医師・河田(柄本佑)。 日々の仕事に追われ、...
在宅医療に従事する若手医師・河田(柄本佑)。
日々の仕事に追われ、妻との仲も崩壊寸前。
そもそも河田は、「開業医への近道」という理由から在宅医師を選んだのだが、同期の若手医師たちは大学で准教授に推薦されたりしており、社会的ステータスは開くばかりだった。
そんな中であった患者は、末期の肺がんを患う井上(下元史朗)。
痛みの伴う抗がん剤治療や手術、延命治療を拒否し、娘・智美(坂井真紀)の意向も受け入れて、在宅医療を選択したものだった。
しかしながら、十分な緩和ケアも出来ず、あっという間にもがき苦しむ中で最期を迎えてしまう。
家庭崩壊のプライベートを抱えた河田の、傍でみていても「親身でない・熱心でない」と思える対応。
そして、遅れてやって来た臨終の場で、娘・智美からは決定的な言葉を投げつけられる。
「あなたを在宅医に選んだわたしの心が痛いんです・・・」
というところからはじまる物語だが、記したところまででほぼ映画の半分程度まできています。
とにかく、もがき苦しむ患者の姿が痛ましく、それを在宅で看護する娘の姿がつらい。
かなりのリアルさで、井上演じる下元史朗の肉体は、やせ細り、弱弱しく、本物の患者と見紛うばかり。
落ち込んだ河田は、在宅医療の先輩・長野(奥田瑛二)に相談し、その際、呼吸に苦しむ井上のビデを映像をみせるのだが、長野はその映像をみて、「自分なら、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を疑う」と言う。
また、「大病院が出したカルテは疑え。在宅医はカルテではなく、患者そのもの、ひとをみるんだ」とも忠告する。
井上の死に責任を感じた河田は、智美のもとを訪れ、焼香するとともに平身低頭で謝り、悔やむ・・・
そして、長野が主催する在宅医療センターで働き、2年後に出逢ったのが、末期の肺がん患者である本多(宇崎竜童)だった・・・
前半の井上の在宅医療が、理想からほど遠い姿だとすると、後半描かれる本多の姿は、理想の在宅医療だといえます。
医師も、患者のすべて、ひとを診(み)、患者も死ぬことを受け容れたうえで、医師に託す。
本多の妻(大谷直子)、在宅看護師(余貴美子)も含めて、まさに理想的な関係のように感じました。
前半の厳しさ溢れる演出から一転、和やかな雰囲気を醸し出しているのが、本多が詠む在宅医療川柳(もどき)で、要所要所で画面上でオーバーラップされます。
そのとぼけた句も心を和やかにさせます。
なかなか、このような理想的な死に方はできないだろうなぁ、とは思いますが、そういう理想的な死に方をみせてくれるあたりに、ある種の安ど感を覚えました。
<追記>
在宅医療のスペシャリスト・長尾和宏の『痛い在宅医』『痛くない死に方』をモチーフにした映画ですが、その長尾和宏を撮ったドキュメンタリー映画が『けったいな町医者』。
こちらも機会があった観てみたいです。
生きて死ぬ
評価高かったのでやってる映画館探して鑑賞♫
序盤少し重めの平坦な時間が続いて苦しかったが、後半どんどん魅力的な作品になった。
終末期をいかに迎えるか。考えさせられる。
俺も人として死んでまで生きながらえたくはない。
生きて生きたまま死にたい。
経験を経て成長していく柄本さんの演技はやはり素敵。さすが。そして宇崎竜童さんがとってもよかったですな。川柳がクスクス笑えて、優しく死んでいくのが素敵だった。
絶妙な構成、宇崎竜童も好演
実在の医師の著書をベースに、日本における在宅医療と「死に方」の問題を真正面から描いた作品。
基となった2冊の著書で取り上げた在宅医療の「現実」と「理想像」を、一人の若い医師の成長物語として再構築した構成が絶妙。
前半の「現実」パートは、監督の盟友である下元史朗(!)の演技があまりにリアルで、観ているこちらも辛くなる。
一転して、後半のパートでは、同じく盟友の宇崎竜童のカッコ良さが際立ち、挿入される川柳も利いていて、魅きつけられる。
両親を相次いで見送った立場から観ると、いろいろと思い起こされたが、見終わった後は、清々しい気持ちになることができた。
残念なのは、週末の夜の回なのに、観客は自分一人だったこと。なかなか若い人は足が向かないかもしれないが、不入りで打ち切りになってしまうのは惜しい。
【おくりびと】を観た時の感覚を覚えた
凄く心に沁みる作品だった😂😂😂
こんな美しい死に方があるんだなあ
わたしもこんなふうに死ねたら本望だなあと思った
映画なので美しいところが強調して描かれているとは思うけど、それでもこういう死の迎え方があるということが知れて、本当によかったと思う🙃🙃🙃
過酷な在宅医療の現実だけではない、人の温もりが描かれていた
在宅医・長尾和宏氏の原作を実写映画化。原作は未読だが、ノンフィクションであることくらいはわかる。
それを自伝的な内容の映画にしたということか。全体的にゆったりと時間が流れる作りだった。さほど意味のないシーンに結構時間をかけたりしているのはドキュメンタリーのようなリアルさを出したいからなのだろうか。個人的にはあまり好きではない。でも、退屈しなかったのだから作り方がうまいということなのかも。
本作に登場する終末期患者は2人。主人公の河田が変わる前と後って感じの扱い方だ。変わる前の河田は患者との向き合い方がややドライ。病院の勤務医の延長という印象だ。後半の河田は先輩在宅医の影響を受け、患者とその家族に一歩踏み込んでいく医師になっていた。その変化はとてもよかった。
特にこれ!という答えがあるわけではないが、死ぬということについて考えさせられてしまう。経営のために患者を早く退院させたい病院側の論理だったり、どんな時間であっても患者家族から呼び出される在宅医の過酷さだったり、自分らしく死のうとする尊厳を押し通すことの難しさであったり、すべて国が推し進めようといしている在宅医療の現実だと感じた。
特に印象的だったのは、最初の患者の一言。病院から自宅に戻ってきて、「やっと自由になれた」と言い放つ。でもその「自由」は家族に多大な苦労を背負わせるものだった。尊厳を守るためにはお金も人的な苦労も必要ということなんだろうか。
そういう意味では後半の終末期患者の死に方はたしかに完璧だった。演じた宇崎竜童の素晴らしさもあるが、本当に見事だった。あんな死に方ができるなら自宅で死ぬのもありだ。
覚悟と悟りと
終末期の患者を診る在宅医の話。
ステージ4の肺癌患者の診療で後悔をした在宅医としては経験の浅い医師の主人公が、先輩の院長に相談し、学ぶストーリー。
人それぞれだとは思うけれど、妻を看取った一人目の夫の死に対する覚悟がなかったり、本人を苦しめるリアクションに少し違和感を覚える始まり。
そして本題が始まり、あらすじにある大貫家の件へ。
手術をを拒んだ上にその状況で在宅での治療を望む娘と緩和ケアを望む本人の選択と、臨終後の娘の発言にも相容れず。
謝罪も今更で、迷い後悔させるだけだと思うしね。
とまあ、死生観は様々だろうけれど、多分、否、かなりドライな自分にはイマイチな序盤。
実際、自分の親もその親も、自身の最後は正にリビング.・ウィルそのもの+自宅で家族に手間をかけさせるのは望まないという選択をしてきた家系だし、自分もそれが理想だし。
そして2年後、本多家の件はもう、やり過ぎなくらいの素晴らしい展開で、これなら自宅という選択も良くわかるし、温かく胸アツだった。
…まあ、それでも自分の時は自宅は望まないと思うけれど。
フリとはいえど、大貫家のやり過ぎ感にちょっと引っ張られ、最後までその感情を引きずってしまったのでちょっと勿体無かったかな。
何度も観たくなる傑作
本作品は東京23区内ではシネスイッチ銀座だけの上映である。女優の高橋惠子さん(旧:関根恵子)の夫でもある大御所の高橋伴明監督脚本作品としては淋しい限りだ。この劇場はいつも年配の観客が多いが、本作品はタイトルの効果もあってなのか、いつにもまして年配の客ばかりである。最近は年配というのがいくつを指すのかわからなくなるほど、還暦を過ぎたくらいでは全然若い人が多い。当方の両隣もおばあちゃんだったが、割と下品なジョークのシーンで大笑いしていた。まだまだ元気である。
本作品は終末医療を扱った作品である。痛くない自殺の仕方を紹介する映画ではないので、そのあたりを期待した方には残念だ。そもそも自殺する人は痛いとか痛くないとか考える前に自殺する訳で、痛くない自殺の仕方を考える人は自殺が目の前に迫っていない人である。ただ、そういう感じで将来自殺しようかなと考えている人は割と沢山いると思う。いわゆる自殺予備軍である。日本では毎日100人が自殺しているが、予備軍はその100倍はいると、当方は睨んでいる。それほどいまの日本には未来がないというか、不安しかない。
さて作品であるが、主人公河田医師役の柄本佑は、同じ医師の役で主演した「心の傷を癒やすということ劇場版」では心に揺らぎのない、人格的に出来上がった精神科医を演じたが、本作品では悩み続けている若手の在宅医を演じた。精神科医の役は安心して観ていられたが、今回は主人公と一緒になって悩むことが出来て、よかったと思う。
前半はきつかった。72歳の俳優下元史朗さんが演じたステージ4の肺癌患者井上敏夫さんを担当した河田医師は、病院のカルテを見て末期の肺癌だから痛みのケアをすればいいと安易に考えてしまう。しかし井上さんは河田が考えていたのとは違った苦しみ方をする。在宅医療で苦しんだのは患者の娘夫婦だが、苦しみ方が肺癌の苦しみ方と違っていることは分からない。対処ができるのは医師だけだったが、河田はマニュアル通りの対応をするだけで、個別の患者としての井上さんを見ようとしなかった。坂井真紀が熱演した娘の智美は、苦しみ抜いて死んでいった父の姿にやり切れない思いを禁じえない。何もしてくれなかった在宅医の河田を恨むよりも、河田を選んだ自分を悔やむ。そう告げられた河田は言葉を失う。
医師は感謝もされるが恨まれもする。因果な商売だ。しかし今回の河田は、恨まれるより前に、医師としての役割自体を否定されたのだ。父の死と終末医療にあなたは何の役にも立たなかった。河田はそのように突きつけられた思いをする。加えて妻からの最後通牒。生きるとは何か、人と人との繋がりとは何なのか。医師としても人間としても岐路に立たされた河田である。
後半は在宅医として先輩の長野医師に相談するところからはじまる。奥田瑛二が演じた長野医師は、大病院がいかに検査依存、カルテ依存かを指摘し、在宅医はそういう数値を見るのでなく、患者本人を見る、患者の人生を見るのだという。柄本佑の嫁(安藤サクラ)の父が奥田瑛二だから義父と娘婿とのやり取りは、互いに俳優としての緊張感に満ちているように見えて、微笑ましいシーンだった。長野医師の、溺れて死ぬ死に方と乾いて死ぬ死に方があるという考え方ははじめて聞いた。含蓄のある言い方だと思う。
終盤は医師としての河田の成長と、見本のような患者本田彰の生きざまと死にざまが上手に描かれて、人生が悲劇でもあり喜劇でもあるとしみじみ実感する。高橋伴明監督の肩の力の抜けた演出がリアリティを醸し出す。人生の匂いのようなものが感じられる作品である。
それにしても大谷直子さんは歳を取っても本当に綺麗だ。鈴木清順監督の「ツィゴイネルワイゼン」のときも妖艶な美しさを存分に見せたが、本作品では年老いた夫を心から愛する妻がふと見せる表情の、ゾワッとするような美しさを見せていた。本当の美人とはこういう人のことを言うのだろう。
本田彰を演じた宇崎竜童は最近は役者として輝いていて、小栗旬と星野源が共演した「罪の声」でも重要な役どころを存在感たっぷりに演じていた。本作品では終末医療を受ける患者の死の恐怖とそれを自分で笑い飛ばしてみせる懐の深い人物を好演。真面目な酒を飲み、川柳で人生を笑い飛ばし、誠実な死を迎える。まさに「痛くない死に方」である。何度も観たくなる傑作だと思う。
人として知っておくべき事
柄本佑さんの大ファンで、見に行きました。とてもすばらしい作品でした。
役者さんのすばらしさはもちろん、人が知っておくべき事のメッセージを強く感じました。この映画を観る事ができて、本当に良かったと思います。
闘病の末に家族を亡くされた方にとっては、目をそらしたい場面もあったと思います。それでも、幅広い世代の方に観てもらいたい作品でした。
前半苦しかった!
前半の辛いシーンを観ている時、最後まで観れないかもと思っていました。本当に苦しかったです。
後半は、とても楽しく観る事が出来ました。先輩のアドバイス素晴らしかったです。
俳句も楽しかったです。
最後の俳句よかったです!
全69件中、41~60件目を表示