劇場公開日 2021年2月20日

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「家族による終末ケアはどこまで可能?」痛くない死に方 talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0家族による終末ケアはどこまで可能?

2023年4月24日
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評論子自身、もちろん自分の「死に方」が分かっている訳ではありませんが。
しかし、多くのレビュアー諸氏が指摘するとおり、病院のベッドに縛り付けられて、挿管だらけの姿で亡くなりたいと思っている向きは、おそらくいないだろうと思います。大方は、本作のように、自宅で家族に看取られながら、静かに亡くなりたいと思っていることでしょう。

しかし、本作の登場人物のように「静かに自然に亡くなる」ことが必ずしもできる訳ではないことも、その一方で動かし難い現実です。

病死であれば、病苦からの断末魔の苦悶の姿ということもあるでしょうし(病院のベッドであれば、そういう姿を家族に見せることは最小限に抑えられる)、痰の吸引くらいてあれば、慣れてしまえば看護師などの医療従事者でなくても可能かも知れませんが、そんなに簡単なケアだけで済むという保証もない、やっぱり病院のベッドサイドでなければ出来ないケアというものもあることでしょう。

けっきょく、本作で言うところの「痛くない死に方」…つまりは誰でもが普通に自宅で最期を迎えることができるようになるためには(本作で中心的に描かれているような)訪問医療のあり方のいかんだけでなく、病苦を充分に緩和できる優れた薬剤の開発、医療知識の乏しい家族でも扱うことのできるケア機器の普及など…。ざっくり言えば「緩和ケアが家族にどこまでできるようになるのか」その点にかかっているように思われました。
その前途は、まだまだ遼遠だなあと思うと、少しばかり気が滅入ってしまいました。評論子は。

talkie