「ドキュメンタリーよりも迫真的」痛くない死に方 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
ドキュメンタリーよりも迫真的
前半・後半と、はっきり分かれた作品である。
前半は、ドキュメンタリーよりも迫真的で、イタ過ぎる内容であった。
在宅医療の“負の側面”が詰まっていると思う。意図的に、問題のあるケースを取り上げたのかもしれない。
苦しくなると「電話で医者を呼べ」と要求する、虫の良い患者。
「標準」治療を拒否したため、大病院からの拒絶にあい、医療“難民”と化している。
家族は、“下の世話”だけでなく、深夜も付きっきりで疲労困憊だ。
看護師では対応しきれない問題が起きれば、専門知識もなく、オロオロするしかない。
しかし、医者は10日おきにしか来ない(“訪問診療”)。しかも、肺気腫を疑わず、誤った措置を選択する・・・。
この映画に不満があるとすれば、この前半部分で提示してみせた問題点を、完全に積み残したまま、後半に突入することだ。
つまるところ、医師のこまめなケア、そして「看取りの実績からの確信」だけが、解決のカギなのだ。
では、そういう資質をもった医師がいない患者は、どうなるのか?
依然として、現実は厳しい。
後半は、一転して在宅医療の“正の側面”が描かれる。河田医師が“成長”したからである。
先輩医師は諭す。「町医者は、臓器ではなく人間を見ろ」、「(慌てず)待てる医者になれ」。“効率性”とは真逆の、リスクのあるアプローチだ。
時に、科学的でさえないかもしれない。しかし“臓器”ではなく、“人間”の問題として見た場合、“効率的”な選択は、“自然な”選択とは異なることもあるだろう。
「人生会議」という言葉を自分は初めて聞いたが、「いつもやっているよ」、「1回2回やっただけ」ではダメだと言う。
河田医師も、先輩医師と同様に、白衣を捨ててフットワーク軽く“往診”へ向かう。
患者が、さかんに“終末期川柳”を詠むのだが、
「救急車 在宅看取り 夢と消す」
「尊厳を 遠くの親戚 邪魔をする」
の2つは、印象に残った。(細かい語句は聞き間違えかもしれない。)
ドキュメンタリー映画「けったいな町医者」の、劇映画バージョンなのかなと思っていたら、とんでもなかった。
2つ合わせて、初めて完成する内容だ。