「「泥棒の娘は盗んだものを食べて育つ」」少女は夜明けに夢をみる Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
「泥棒の娘は盗んだものを食べて育つ」
ドキュメンタリー作品に、(a)意図や思想を明確に示すものと、(b)映像を出して観客に自由に考えさせるものの両極があるとすれば、意外なことに、本作品は後者に属すると思う。
よって鑑賞後には、どこか“食い足りない”感じは残った。
ただし、たびたび少女たちへの直接インタビューが入るので、ワイズマンの映画のような、完全な傍観者(第三者)ではない。
顔出し取材なのに、少女たちが臆せずに話してくれるので、どういう犯罪をしたのか、その背景は何か、今どういう気持ちなのかが、具体的に浮かび上がってくる。
家庭に問題がある点で、同じ境遇にある少女たちなので、連帯感があって仲が良いというのが印象的だった。
全部で10人程度の少女のインタビューを取るが、映画が進むにつれて、主に2人の少女にフォーカスする内容となっている。
イランでも、珍しい取材のようだ。
基本的には日本と変わらないのかもしれない。
ただ、日本のような複雑で派手な消費社会ではないので、非行の原因は、薬物か、性的被害か、その両方という、かなり単純な構造に見えた。
また、日本よりも女性への社会的な束縛が強い社会なので、“絶望感”はより深い。出所しても状況は変わらないので、「釈放されたくない」という少女がいるのには、驚きだった。
日本でも、顔出し取材でなくてもいいから、こういう問題がもっと“顕在化”すれば良いと思った。
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