HOKUSAIのレビュー・感想・評価
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北斎の伝記としては弱い
この作品は北斎自身の芸術や生涯にあまり重きを置いていないように感じられた。では、どこに重きを置いているかと言えば、北斎を取り巻く社会状況、江戸時代の芸術の抑圧である。蔦屋もやられ、歌麿も捕縛され、柳亭に至っては殺される。そういう理不尽。その中で自分の絵を描き続ける北斎。そういう部分は個人的には芸術的な視点ではないと思う。社会に対する怒りや不満のようなものが重点的に描かれており、それは北斎の思いと重なっていたというのが制作側の主張だったのだろうか?私としては芸術家としての北斎の内面・感性を作品と共にもう少し見せてほしかった。
(追記)
この映画の中で最も良かったのは蔦屋だと思う。「世界に出て、見たこともないもんを見て、店をやって、自分の目が確かだと証明してやる」っていう彼のかなわぬ夢はとても清々しく、彼の生きざまそのものだと感じられた。「面白いものは、誰が見たって面白い!」。蔦屋さん、ほんとその通りだよ。天才絵師が世に認められて活躍するには、こういう才能の人も絶対に必要だね。
これは、教材だ。
これは、映画ではない。まるで、北斎美術館の展示物の前で、ナレーションを入れて流れているあの映像だ。
心の眼で見る。感じた物を描く。凡人たちは、見たことない風景画だけと、これだよこれ! と思う。ジョブズ的に言えば、あなたの感じていた物は、こんな形ではないですか? って感じ。
この辺りを、丁寧に描いた映像教材だ。
勉強だと思って見てください。そんな出来になってます。
自分は、見て良かったと思いました。
普通の伝記ドラマの域を出ず。反骨の絵師としての北斎ではなく、あの技法・作風を産み出すまでの北斎を見たかった。俳優は熱演だが北斎の人間像が見えて来ない。
①唯一見所なのは種彦が切り殺されるところを恰も目の前で見つつ絵を描きあげるシーン。②北斎の前半生は分かっていないので、徳川幕府による町人芸能・芸術への弾圧を絡めたドラマにしたのだろうが(今さらというテーマだし)今一つというか作り話感強し。③北斎の偉大さが一つも伝わって来ないのが致命的。北斎が稀有の絵師であるという周知の事実に便乗して作るのなら映画を作る意味がないでしょう…
前半はなかなかの見応え
前半は、歌麿、写楽が登場して北斎との才能のぶつかり合いが面白い。謎の絵師と言われる写楽が、如才ない若き天才という演出もなかなかいい。道楽で筆を走らせたらとしていたら短期間で姿を消したのもあり得るかな。
後半は、テイストが変わってアート的な演出が多くなるのだが、これがあまり良くない。北斎の絵に対する情念が伝わってこない。80才を越えた体で、信州・小布施に向かったのは、命が惜しいからではなく、絵を描きた一心からだったと思う。
せっかく田中泯が鬼気迫る演技をしているのになんかもったいない。柳亭種彦の最後もそう。アートな仕上がりにしたいがためにおかしなことになっている。斬首って武士にとってもっとも屈辱的なはずだけど。
物語にはあまり関係がないけど、絵師や戯作者を弾圧した『天保の改革』って呼び名が昔から引っかかる。時計の針を戻して国内を混乱させただけなんだから『天保の失政』と呼ぶべきだと思う。
だんだんと尻つぼみに…
とりあえず言えるのは演技は素晴らしい
その分、演者の無駄遣い感が半端ない
全4序からでなりたっている映画の様なのですが
大きく分けると青年期と終焉期なのでしょう
1-2序は何となく期待をさせる展開ではありますが
肝心な絵やそこに行き着くまでが適度で
苦悩が余り感じられる尺もなく編集も良くない
終焉に2序も割くなら青年期の苦悩を十分に尺を
取った方楽しめたのでは? とさえ感じる終焉の
だらだら感と尻つぼみというか…
何もかもを台無しにしている気がします
トータル尺が長いだけに時間の無駄遣い感が
半端ない印象です
自由な世に変えるという意思
おそらく、この映画は、北斎の生涯の伝記ではない。
年代ごとの章立てになっていて、その時どんなことを成し遂げたかを見せていくため、小さな物語として進み、一見すると散漫なまとまりのない映画に見えるが、さにあらず。
「自由な表現の場を欲した生涯」を描いていたように思います。
幕府による表現規制を例にとり、「人が言いたいことが言えないようにし、文化芸術科学を見下し無駄なものと貶め、民は愚かで税を納める奴隷であることを望む政府・為政者の卑劣な姿」への[反抗][抗議][批判]が表現したかったことに思えました。
そして、「絵(=絵画や映画、漫画などの表現)は世界を変える」という志の発露こそが、この映画の肝なのだろう。
【”如何に弾圧されようとも、文化の灯りは消えず。そして、優れた絵は世の中を変える。”今や世界に認められている、北斎の絵画の才能の萌芽と、開花する姿を名優二人が見事に演じた作品。】
ー 今作は、人によっては説明が足りない、人物相関が分かりにくい、と言う人もいるかもしれない。だが、そういう場合は、一人の一途に自分の道を突き進む男の物語として見れば良いと思う。
勿論、文化文政時代の様々な出来事の知識がある程度あれば物語の面白さは、倍加するが・・。ー
■感想
◆青年期
・北斎の青年期の記録は殆どない。
・が、今作では“きっと、そういう人物だっただろう・・”と思わせる破天荒な負けず嫌いな青年、北斎(実際は勝川春朗と言う号を名乗っていた。)を柳楽優弥さんが、魅力たっぷりに演じている。
・蔦屋重三郎(阿部寛)に、見込まれるも、歌麿(玉木宏)や、突然現れた写楽”この人の存在は、今でも疑問視されている。名のある画家が変名で書いたのだろう・・とか。”の屹立した絵の世界観に圧倒され、苦悩する姿。
ー 青年期シーンの白眉は、全てを投げ捨て、放浪の旅に出た際に海に入り、波に揉まれて生み出した、”江島春望”で描かれた“波”の筆致に辿り着くシーンであろう。ー
◆中堅期
・若き日に、新境地を見出した海岸に行った帰りに見た、紅に染まる不二(劇中では、”二つとないから不二”を忘我の表情で見詰める北斎。(田中泯:イメージがドンピシャである。)
・富岳三十六景の名作”赤富士”の誕生である。
ー 名もドンドン変えながら、絵師としての幅を広げていった時代であるが、今作ではサラリと描かれている。ー
◆老年期
・紺青(プルシアンブルー:ベロ藍とも呼ばれていた・・)と出会った際の、北斎が雨中、家を飛び出し、全身に流れる紺青の鉢を高々と掲げ挙げる歓喜の表情のシーン。
・お上の文化統制により、武家でありながら読本を書いていた柳亭種彦(永山瑛太)の非業の死をイメージして描いたかのような鬼気迫る”非業の死”。
ー 明らかに、町民文化を抑圧する江戸幕府が執行した”天保の改革”への強烈な怒りが生み出した作であろう。ー
・そして、青年期と老年期の二人の北斎が、プルシアンブルーも鮮やかな、「怒涛図」の”男浪””女浪”を描き上げる幻想的で、美しくもダイナミクス溢れる力強きシーンも見事である。
<絵を基に、木の板を削り出し、版画を作り、刷るシーンなども、面白く鑑賞。
あれだけ、幕府の統制を受けた北斎の錦絵や、肉筆画が現代の世界の美術界から絶賛を受けている事実を鑑みれば、如何なる弾圧を受けようとも、優れた美術文化の灯は、永遠に世界を灯すと言う事実を再認識し、且つ柳楽優弥、田中泯と言う現代邦画が誇る稀代の名優が青年期、中堅期、老年期を演じた今作は、実に見応えがあった。>
◆亡き、杉浦日向子さんが遺された名作「百日紅」が、読みたくなった作品でもある・・。
田中泯が出ているのにこれほど詰まらないとは
4部構成の伝記風の作りになっている。90 年もの人生を送ったため、話を絞るためであろう。だが、北斎の人となりを描けていたかといわれれば素直には認めがたい。画家の一生自体が面白いかという問題である。ハリウッド映画のように 15 分ごとに盛り上がるシーンを用意するという訳にも行かないので、起伏の少ない話に陥るのは避けられない。それを脚色するのが脚本家の腕前だと思うのだが、この脚本家は力量不足ではないかという懸念が終始付き纏い、結局晴れることはなかった。隣の席で見ていた客がいびきをかいて寝ていたが、無理もないと思われた。
話の起伏を共演者の方に頼っているのがまず肩透かしである。最初は蔦屋重三郎や歌麿に頼り、後半は柳亭種彦に頼りっ放しである。蔦屋の従業員が滝沢馬琴だったという説明もなく馬琴が登場するのも面食らわされる。最初は大した絵が描けなかった北斎の若い頃を描いているが、雑で乱暴である。写楽に食って掛かる場面など、画才も十分でないのに何を偉そうにという反発心しか感じられないのでは描き方として失敗ではあるまいか?
ダ・ヴィンチとミケランジェロとラファエロの関係になぞらえてみれば、当然互いに競争意識は持っていただろうが、相手を面前で貶すなどということをするわけはなく、相手の技量を認めた上で刺激され、自分の技量を高めたはずである。写楽に食って掛かる北斎は見苦しかった。その後の精進と実力の開花の描き方も伝わるものがなく、着衣のまま海に入っただけでいつの間にか売れっ子になっていたというのでは、観客は疎外感しか味わいようがないのである。
映像はかなり異色だった。歌麿の居座っている吉原の部屋の内装にデカデカと描かれていたのは、どう見ても伊藤若冲の鳳凰図をモチーフにしたもので、京都から一歩も出なかった若冲の作品が、江戸の吉原の内装に使われていたという描き方には非常に違和感を覚えた。北斎の画業の上達を波の絵を通じて示そうという意図のように見えたが、神奈川沖浪浦を描いたのは 70 歳過ぎの話であり、晩年に差し掛かった頃の話で、85 歳で旅先の信州小布施で描いた「男浪」「女浪」の天井画で完結させるというのはやや強引である。どうせなら同じ小布施で描いた「鳳凰図」と「龍図」の方が締めに相応しかったと思う。
波乱といえば、火事の多い江戸で 93 回も転居したのに火事に遭わないと自慢していた北斎が、75 歳の時に遂に火事に遭って多数の作品を焼失したのだが、その話が映画で全く描かれてなかったのは何故であろうか?
柳亭種彦が武士の身分でありながら幕政をネタにした本を出版したために上司から咎められるという話は史実であるが、あの結末は盛り過ぎである。享保の改革で自作が問題視されたためにショックを受けて病死したというのが有力な説である。それにしても、この種彦はまるで Facebook の言葉狩りでアカウントを抹消するぞと脅されるユーザを彷彿とさせた。実に理不尽な話であると我がことのように腹が立って仕方がなかった。
役者は実力派を揃えてあり、特に晩年を演じた田中泯は良かったが、高価な岩絵具を粗末にするような演出には首を傾げたくなった。後半の娘役で出演していたのがこの映画の脚本を書いた人物だそうである。田中泯の出る映画につまらないものはないと思っていたが、ついに例外が出来てしまったようで残念な思いに駆られる。音楽はない方がいいくらいであった。監督は劇場版の「相棒」などで知られた人だが、今時スタビライザーも使わない手持ちカメラでの撮影など、何の趣旨があるのか解しかねる演出であった。脚本が悪いといくら監督が頑張っても良くはならないというのを再認識させられたような気がする。
(映像3+脚本1+役者4+音楽1+演出2)×4= 44 点。
もったいない
これだけの役者とセットを用意して、もったいないと思ってしまった。北斎の芸術についても、人間関係についても食い足りないというか。
柳楽さんの目はいつも色気と力がすごい。田中泯さんの顔芸は舞踏で培われたものなのだろう。
城 桧吏くん、柳楽くんによく似てる。柳楽くんとの本格的な共演を待つ。
制限されるから発展する
コマーシャルで気づいたとき、緊急事態制限の今のタイミングで行っていいのか迷ったが、朝の報道番組で吉永小百合さんや他2名の女優さんの悲痛な訴えから、迷いがなくなった。
小学生の時、ゴッホを題材とした映画で、「この大胆な構図...」と、北斎の絵が出てきたことに、西洋かぶれしていた当時の私は、それが不思議な感覚だったことを覚えている。
数年前からの北斎ブームで、様々なメディアからの解説でファンになり、あべのハルカスまで北斎展に行くようになった。
しかし、作品のすばらしさはわかったが、、時代背景は無知だった状態。
こんな私にとって、この映画はとてつもない衝撃であり、今、元気を失っている人たちに見ていただきたいと思った。
鎖国が手伝って、文化が発展した江戸時代。
浮世絵は後押しがあって発展した文化だと思い込んでいた。
しかし、大衆には支持されながらも、おかみからは迫害の対象になっていた。
迫害される中、それを恐れぬ獅子たちの意志が創り上げた文化。
後半、抵抗なく流れる不思議な涙が、首から胸に流れっぱなしになった。
4章でまとめてくれていたが、よくこの時間内にうまく表現できているなあと、あとから振り返りながら感じるところです。
映像も役者の演技も画面に引き付ける魅力があり、個々の代表作品とのつながりもわかるようになっているので、おもしろいだけでなく知識に深みが増して、作品に感謝。
個人的には、北斎の才能を継いでいる娘のおえいさんの映画もできればとか思っている。
北斎は変わりゆく世の中を見たかった。
浮世絵師 葛飾北斎。描きたい物をかく。という信念で一生涯描き続ける。見える物を描くのではなくて見えない目の奥に感じる物を書く。
自由に描くこと。自由に執筆することが難しい時代だった。北斎はいつか時代が変わっていくことを望んでいた。変わる世の中を見たかったのだ。
描いて世の中を変えることができると信じていたが変えることは出来なかった。
波の絵は独特で波が生きているかの様。
柳楽、田中の迫力のある演技が素晴らしい。
時代背景を重点に描いてる。絵師の絵の方ももう少し見たかった気もする。
北斎の絵は何故か惹き付けられる。
普通の映画。スジは単純なので良い。
柳楽優弥と田中泯。既に文字変換がめんどくさい時点でこの2人マイナス評価。イラつく。
荒削りで粗暴な青年期と老年以降の葛飾北斎を描く。
90近くまで生きて途中脳卒中って・・所詮、後世の鑑定なんて当てにならない。脳卒中後に旅は無理というもの。
ゴースト絵師がいたんじゃないの???手が一度震えたら江戸時代じゃ無理だってば、平均寿命も50いかないんだろうから。
なんか作中、柳亭種彦と時系列が微妙に合わないし。むしろ芸術家の真骨頂見せたのは永山瑛太(この人一発変換で良い)演ずる武士で戯作者の柳亭種彦の死に際。なんか史実とは違うみたいだけども。
田中泯って、申し訳ないけど、微妙に老人にしては落ち着かないんだわ。もうちっと老成した役できる人が適任ではと私には映った。
あと、青い色の顔料。雨中で持って「芸術は爆発だ!by岡本太郎」みたいなのもなんだかなぁ。
発見として浮世絵って実は彫師と摺り師の合作だったのね。肉筆とは違うのねという発見があった。
遊郭の背景と相まって
版元蔦屋重三郎の阿部寛と喜多川歌麿の玉木宏はキャラクターが分かりやすくて非常に良い。好演。
なんかよくわかんない作家が・と思ったら滝沢馬琴だった。有料パンフで確認。
とにかく難しい展開はないからその意味では疲れなくて良い映画。北斎の長屋と、老成後の棲家が江戸時代リアルでよかった。ただ、旅の描写は物足りない。
そもそも、永谷園のお茶漬けのおまけ、安藤・・じゃなくて歌川広重の「東海道五十三次」と北斎の「富嶽三十六景」間違える人間の私には少し高尚すぎたかもしれないなぁ。結論としては可もなく不可もなしの無難な映画。字幕の多人数複雑映画と比べればかなりハードル低いと言える、とは言え。なんかもう少しインパクト欲しかった。
旅、放浪に北斎は活路を見出した点と柳亭種彦とのコンビ、その死の衝撃はよくわかる。表現の自由は厳密に言えば、第二次対戦後、進駐軍が撤収するまで時間がかかりすぎた。
歴史的な意義
公開初日に観た。柳楽優弥は以前からどことなく惹かれる俳優さんで、今回も半ば狂気を感じる役作りでとても良かったと思う。あんな風に歌麿と写楽と北斎が同じ席で一緒に遊んでいるなんていかにも楽しそうだ。
阿部寛扮する版元って言うのは今の画廊なんだろうね。京橋で同級生が画廊をやっていて、プライマリーとして作家を抱えて育てているから良く理解出来るよ。北斎も壁に当たって旅に出て描いた作品を版元に素直に見せる場面もあったが、売ってくれる人をその気にさせるのが実力と言うものだろうな。
瀧本美織ファンとしては、健気な妻と言った役どころで良かったと思うが、出会いのシーンもなかったし、もっと出番を多くしてほしかったな。
後半は決して悪くはないけど、盛り上がった前半に比べて全く別の作品の様な感じだった。雨の中で北斎が藍色の絵の具を浴びるシーンの意味が分からなかったし。でも全体的には歴史的にも意義があって良い作品と思うよ。
大人になるな!子どもにもなるな!あなたになれ!
生きたいように生きられる時代は幸せだ。知ったかぶりな大人、未熟な子どもではなく、あなたになって、あなたで生きるんだ。あなたで生きられるこの世はいい世の中だ!あなたは唯一無二。あなたになって、あなたで居るんだ!どんなときも。
演技は素晴らしいが、、、。
TIFF2020クロージング作品として鑑賞。
特に柳楽さん田中さん瑛太さんの熱演良かったです。
けど、申し訳ないですが、それだけでした。
あまり資料が無い中の物語作りは凄くご苦労されたとおもいますが、どうにも散漫な印象と、波をシンボル化し過ぎなんじゃないか?と。
正直、波の表現に至ったエピソードは
印象に残ってません。
また、画狂感が残念ながら弱い。
伝説の絵師を描くにあたり、
上手くまとめすぎたのでは?
北斎のセリフじゃないけど、
「指図されるようなことはしたくない」
な感じで、もっととんがった作品でも
良かったんじゃ?
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