「北斎へのリスペクトがない 嘘で固めた映画」HOKUSAI レモンブルーさんの映画レビュー(感想・評価)
北斎へのリスペクトがない 嘘で固めた映画
私は6年前、小布施の北斎館を初めて見学した。北斎というと 「富嶽三十六景」しか知らなかった?くらいだったが、北斎館では北斎の多様な作品群と90歳まで描き続けたという 絵への凄まじい情熱に圧倒され、また、84歳超えて、江戸から小布施までの250kmを旅した!それも4度も❗という事実に まさに絵を描くことへ どれだけのエネルギーが北斎を動かしたのか!と ただただ その超人ぶりにひれ伏した。
そして、当時 北斎に関する番組が幾つか有り、ますます北斎に興味を持った。それ以後も北斎関係の番組は見逃さず、最近も かの有名な「神奈川沖浪裏」の波についての検証実験を行った番組を観たが、ハイスピードカメラで捉えた波の先端の波形が、まさに北斎が描いた鉤爪のようになっているという事がわかった!そして、あそこに描かれた三艘の船は実は一艘の船が波の状態によってどう波に乗るのかという 言わば一枚の絵の中に描かれたアニメーションだった!という事も検証された!なんという 鋭く正確な観察眼だろう❗またもや ひれ伏すしかない…!
そんな私は 「HOKUSAI」を非常に楽しみにしていた!田中泯さんが北斎なんて 期待しかない!
のに…何だ?コレ?
観てる間中 疑問とため息ばかりが私を覆っていた!ガッカリどころか、怒りにも似た感情。
そこに描かれた北斎は 私が知ってる北斎とは全く違う人間として描かれていると思った。納得出来ず、帰り道に図書館に寄り4冊の北斎関連の本を借りて来て、自分の違和感の正体を探った。
私が思う北斎は 絵を描く事だけに関心が有り、絵を描くためなら他のことはどうでも良く、死ぬまで絵の向上をひたすら目指して、死ぬ間際には「後10年…いや後5年長生き出来たら、真の絵描きになれるのに…」という言葉を遺した という、絵への情熱の塊。天才であり、超人❗
先ず 違和感が有ったのは 映画では若い頃の北斎は売れてなかった?そして、蔦屋重三郎に見出された? 写楽に嫉妬?である。そして、写楽の言葉から自身の足りないモノを見つける為に放浪し、遂に波を描く。そして蔦屋に認められる。
本当に?そんな事ある?
調べた結果、北斎は20歳頃にはプロデビューしており、ちゃんと普通に売れていた。蔦屋から本も出て居るが、蔦屋重三郎のWikipediaや北斎の年表の幾つかを見る限り、蔦屋とは深い繋がりはない!蔦屋は 歌麿や写楽を売り出した版元という事実が大きい。しかも、映画で描かれたように 当時の写楽が、北斎より売れていて、「役者の中にあるモノを描いておるのだ」などと上から目線で語るなど 全くの事実無根❗写楽の絵は当時 あまりに役者の特徴を掴んでいて、本人の欠点まで描いているという事で、庶民だけでなく、モデルになった役者本人からも人気が無く 売れなかったそうだ。そして、写楽の絵の完成度は尻つぼみに低下したようだ。写楽は10ヶ月で消える。なのに何故 写楽が今 もてはやされるのかというと、他の浮世絵と同様に陶器を包む(今の新聞紙的な)用途で海外に渡った先で、ドイツの評論家?の目に留まり、それが明治時代に評価が逆輸入されたからだという。
とにかく、そんな写楽より 北斎が劣っていたかのような描写は 全く いただけない!酷い。
もし、仮に本当に このような場面が有ったとしても、北斎は写楽のデフォルメを咎めたりするはずは無い。「北斎漫画」を後に描く事になるわけだから、デフォルメに関しては違和感など持たなかっただろう。
そして、若き北斎が蔦屋に見せた あの波の絵は「おしをくりはとうつうせんのず」という40歳過ぎに描いた絵だと思うが、蔦屋重三郎は北斎が37歳の時には亡くなっていた。「北斎」と名乗ったのも39歳から。蔦屋に見出されたという演出は 蔦屋重三郎の役に付加価値を持たせる為、演じた阿部寛さんに魅力を持たせる為のものだと感じた。
どれだけ デタラメなフィクションなんだよ!北斎に失礼だ!制作者は北斎を愛してない!
更に、北斎が卒中で倒れた時は68歳で、既に「富嶽三十六景」を描き始めてから五年程経っていた。北斎の史実や記録には北斎が、病に倒れるも、独自の薬を研究し飲んで、回復したとある。不自由な身で 旅したとは何処にも書かれてない!本当に 絵が描きたくて 描きたくて、その強烈な思いで 短期間で驚異的な 回復をしたであろう!北斎の90年の生涯を思うと それは奇跡でもあり、必然、当然とも思う。不自由な身での旅の方が、観る者に訴えるとでも考えたのだろうか?とんでもなく安い演出だと思う。
そして、あの当時、外国から入ったばかりの「ブルシアンブルー(ベロ藍)」に感激して 頭から浴びる‼️シーン!有り得ない!絵師が貴重な絵の具をあんな風に無駄にするなんて!先ず、絵の具使って何かしら描くでしょ!どんな素晴らしい青か確かめるでしょ!…このシーンには呆れ返った!この作者は全く絵を描かないし、絵描きの心も無知なんだと確信した。
そして 最も酷いと思ったのは
「柳亭種彦」を北斎の朋友?のように描いた事!
柳亭種彦と北斎は種彦が25歳の時(北斎は48歳)に「阿波濃鳴門」なる戯作を北斎(挿絵)と作ったという記録はある。しかし、種彦は30代を過ぎると その後亡くなるまでの三十年間、歌川国貞という絵師と組んでいる。
それは 北斎から離れたのか?種彦の方からかは不明だったが、そういう仲の二人が 映画のような親しげな間柄ではあるまい!映画を見ていて一番腑に落ちないと思ったのは、北斎が 種彦の壮絶な最期を思って描いたとされた絵!あんな絵は今まで 北斎の絵として観た事はなく、もし そんなエピソードがあるなら もっと有名であっておかしくない!調べたら たしかに存在していた。が、これは 北斎の妖怪やお化けの絵のひとつに過ぎない。何故なら、よく絵を見れば首の近くに柄杓が描かれている。壮絶な死を思って描いたとしたらとんでもなく変な図柄(笑)
種彦が死んだのは 当時 天保の改革で 書物の版が差し止めにあい、そのショックで病に倒れ、亡くなったとの事。映画での種彦は 死ぬ事も厭わず、お上に逆らい 首まではねられる❗という重い罰に処せられたが、あんなのは 全くの作り話!嘘。もし、仮に処分が真実であったとしても、その種彦の屍を見舞いに行く程の恩も情も存在したはずは無い!北斎にして見れば、自分ではない絵師と30年間もつるんでいた戯作者である。しかも、種彦が死んだのは60歳である。瑛太さんの種彦はどう見ても40代半ば。都合良く 種彦の没年に あの絵が描かれたから 二人を懇意の仲としたに違いない!
何故 こんなフィクション=嘘を絡めたかというと、権力や芸術への取り締まりに抗う姿は、簡単に共感を呼べると考えたに違いない。写楽の件も「あの北斎も若い頃はダメな時期もあったのだ」と観賞者に共感してもらう意図かもしれない。が、
それこそ!北斎の真の姿を捻じ曲げ、冒涜してるとしか思えない!
せっかく田中泯さんが演じていても、北斎の偉大さは伝わらず、むしろ矮小化してると感じた!制作者は北斎をリスペクトしてない!
北斎は その作品を見て、素直に史実を追うだけで、その ほとばしるエネルギー、情熱に感動出来る天才だ!
絵を描く事が 北斎の生きる全て。
多分 北斎は 取り締まりに対しても、「困ったな」とは思っただろうが、抵抗する気はなかったのではないか。そんな事に心を砕く隙間は北斎にはなく、ひたすら 絵を描きたくて、描きたくて、そんな北斎を思った弟子の高井鴻山からの小布施への招待を 非常に喜んだに違いない。鴻山は北斎の為にアトリエまで建てた。そして、85歳から89歳まで4度も小布施に旅した!その間に描かれたのが、ラストの波涛の図。あれは 小布施の祭りの屋台の天井画で 計4枚描かれた。地元の村人に愛されたという。
フィクションだらけの北斎の生涯の何処に感動出来るだろう❗
この映画を観た方々の大半は これが事実(史実)だと認識してしまうだろう!それが 一番 腹立たしい!
少しでも 北斎に興味を持ったなら 是非 本当の作品群を直に見て欲しい❗
そうすれば、「世界に影響を与えた人物100人」の中で 唯一日本人で選ばれたのが 北斎だという事に 納得が行くはずだ。
もっと不満な点は幾つもあるが、とにかく 演出や嘘で固めたストーリーは 全く評価出来ない!むしろマイナスを付けたい!
ただ、演じた役者に罪は無い!それぞれが与えられた役を懸命に演じていた。その役者への点数が、二点。
特に 柳楽優弥さんの絵師としての佇まいは 非常に美しかった! 姿勢、筆の持ち方、筆運び、真剣な眼差し、どれもが 大変に優美で、見とれた!
この映画は二度と観ないが、柳楽優弥さんの佇まいは ずっと見ていたいと思った😊
[追記]
北斎はタバコ 酒は飲まず、甘い物が好物で、生涯に90回以上も引越したという。北斎も栄も絵を描く事だけで掃除もせず、汚れて居づらくなったら他に移ったらしい。時には滝沢馬琴の所に身を寄せたことも有るようだ。雅号も30ほど変えていたそうだ。「画狂老人」もそのひとつだ。
北斎は旅が好きだったというから、ひととこに留まるのは性にあわなかったのかもしれない。名前を変えたのもの そんな気持ちの表れかも…?小布施では、子供に絵を描いてやったり、毎朝 魔除けの絵(獅子が笑ったり、ムスッとしたりしたり、その日の気分で表情が変わった)を描いていたそうだ。北斎漫画など見ても、北斎にはユーモアも有って、ひょうきんな面もあったのではないだろうか?私が、思い描いた北斎は ただ ひたすら絵が好きで、常に 好奇心と向上心と 遊び心を持って描き続けた天才❗
甘い大福を美味しそうに頬張り、野の草花や市井の人々を愛おしそうに観察し、やんちゃな表情で絵を描く…そんな北斎を演じる田中泯さんを見てみたかった。
北斎漫画の「漫画」とは北斎が「気の向くままに漫然と描いた画」とその絵を称していた事から 後に付けられた言葉だという。北斎漫画は 今の漫画とは違い、ストーリーは無いが、その表情や動きなど非常にバラエティに富んでいて、見る者に楽しさや物語を思い巡らせる力があり、当時 庶民に大変な人気だったそうだ。
今や 日本の文化とも言える 「漫画」の言葉のルーツが北斎だという事が、嬉しい!いや、凄い事だと思う!
※ 一部追記しました(プルシアンブルーについて)
レモンブルーさんの北斎愛、凄いですね!
とても勉強になりました。
私は絵は描けませんが見るのは好きです。書かない私でも、あの絵の具を顔からかぶるシーンはちょっと興醒めしましたよ。大事な絵の具をあんな勿体無いことしないよな〜、アレはだめですね。
今回レモンブルーさんのレビューやそれに対するみなさんのコメントでつまらないと感じた理由が少しわかったような気がしました。
でも、それぞれの演技や映像の美しさはありましたよね。
太陽の子の方へのコメントありがとうございます。
HOKUSAIも鑑賞しました。
好きな俳優さんがたくさん出るということもありましたし、ストーリーも予告では面白そうだったのですが…残念ながらあんまり面白くないというか、期待外れに感じて自分ではレビューもしていませんでした。
NHKのオンデマンドで観られるようですね。
私も「吉原格子」の絵を観た時は衝撃でした!もし、お榮が後50年遅く生まれてたら、女流画家としてどれだけ世に高く評価されていただろうと思いました!私もお榮の絵は大好きです!!
北斎の絵として発表されてる絵の中に 明らかに 女性らしい繊細さがある絵がいくつも有り、お榮の絵ではないかと研究者は感じているようです。ドラマの中にも お榮が北斎の作品だと売れると言って自分の作品に北斎と落款を押すシーンが有りました。私は録画していたので、何度か観ています。
お栄さんの吉原を描いた絵はとても有名ですが、本当に世界観というか全体の構成含め色彩、絵としての出来、全てが素晴らしくて本当に才能を感じる物です。
どちらかというと北斎よりお栄さんの絵の方がより好きです。ドラマご覧になったんですねーとても羨ましいです。是非見る方法を検討してどれかの方法で視聴しようと決めましたかお
asicaさん 私も数ヶ月舞台関係の仕事しただけで、キツイ仕事でやめました😓 NHKの「眩(くらら)〜北斎の娘」は大変素晴らしいドラマでした!脚本は今 大河脚本を担当している大森美香さんで、このドラマの方が何倍も北斎の姿を忠実に描いていたと思います!是非 おすすめします!宮崎あおいさんのお榮は とても魅力的でした!北斎の家のレプリカがある事は あるレビュァーさんからの情報で知りました!観てみたいです!お隣に住んでいらっしゃる?(笑)
そうそう お榮を描いたアニメ映画もあります!「百日紅(サルスベリ)」というタイトルです。こちらも史実かどうかは分からなかったですが、少なくとも「HOKUSAI」で感じた嘘臭い雰囲気はなく、ドラマとして とても優れた作品だと思います。よろしければ是非!
お榮の絵は貴重なので 常設展示にはしないのかもしれませんね。いつか 観られる時が来るでしょう!ありがとうございます!😊
私が見たのは原宿の太田記念美術館だったのですが、所蔵とあるのですが常設展示ではなかった気がしています。
今調べてる時にすみだ北斎記念館に北斎とお栄の部屋のレプリカがあるというので(前に出来たばっかりの頃はなかった)近いうちにもう一回入ってみたいと思います。何しろ歩いて数歩なので。
長野はいいですよね。温泉で数回行きましたが小布施は一度だけです。グラフィックは学校だけです😓。私の人生においては大きく影響された経験ではありましたが仕事にする事は残念ながら出来ませんでした。お栄さんの方は数年前にNHKのドラマで宮崎あおい主演でやったのを見たいなあと思ってるのですが叶ってなくて。もしご存知なら是非感想をお聞かせください。お栄さんの絵は今見られる所ってどこがあるのでしょうか美術館所蔵がない気がしてるのですが。ちょっと調べてみますね。
asicaさん 早々のコメントありがとうございます!実は私も美大生でした。😊舞台美術関係の学科だったので、学生の頃から舞台もよく観てました。北斎は普通の人々と変わらない認識でしたが、北斎館を観て…俄然 崇拝すべき芸術家だと思いました!なので、絵の具を浴びるシーンには呆れ返ってしまいましたが、何故かレビューする時抜けてしまいました(笑)
お榮の絵は是非直に観たいと娘達とも言ってます!コロナさえなければ、すぐにでも東京に飛んで行くのに…いつかきっと行きます!小布施には今秋に行く予定です。asicaさんも是非またいらしてください。(一応長野県人なので…)😊
入りやすくとても興味深く読ませて頂きました。北斎の娘の絵の方も数年前に開かれた展示を見に行きましたが、本当に素晴らしくその後大ファンになりました。
もし北斎美術館にお越しになり、私のわからない素晴らしさを見つけられましたら是非教えて頂きたいと思っています。小布施は北斎の絵と栗の美味しさを今でも鮮明に記憶していますがあの頃は「北斎ってあの北斎?ここに?」という思いだけでしたが今となってはよくぞ見ておいたものよ、と思っています。
返信ありがとうございました。
はい、見てないのですがなぜここのレビューを見るに至ったかと申しますと「愛のコリーダ」でのkossyさんとのやり取りの中で北斎美術館という単語を見かけたからでした。
私は美術系の大学(グラフィックなので商業美術ですが)だったので授業で日本画も水彩画も何度か経験程度にやりました。
お金に不自由してる学生にとって課題のたびに必要な画材の費用が食費を圧迫する事たびたび。そういう記憶もあって、レモンブルーさんのレビューも非常に
asicaさん 私のレビューから こんなにも切実な思いを 今ある世(社会や、街づくりなど)に感じて、コメントいただきありがとうございますm(__)m
すみだ北斎美術館には是非行ってみたいと思ってますが、外観はちょっと北斎らしさはないなと思ってました。😅小布施とは 足元にも及ばない?内容なのですか?この映画のように北斎を利用しただけの客寄せ(海外客目的?)施設なら、本当に残念です!😡
これ以上 本当に凄い業績を誇る「北斎」が利用されて、歪曲、矮小化されないよう願うばかりです…。コメントありがとうございました!
にしようと「無知な者」(地元の議員)が指揮をとるとこうなるんだよ、と哀しみを覚えます。
江戸博は「やっちゃば」という市場の移転で空いた広大な土地の後利用で、随分と小綺麗な町になったのは有難いのですが、レモンブルーさんの素晴らしいレビューを拝読してるうちに、そういった後世の者の不勉強が残す歴史の歪曲の罪を思いついつい冗長なコメントをしてしまいました。
創設期に2度程行っただけですので今は変わってるのかもしれません。
江戸博から錦糸町へ続く道は「北斎通り」の名前が付いてるのですが、昔は鉄鋼の工場が並ぶ「南割下水」(みなみわりげすい)と言ってたのです。
工場は郊外に移転もしくは廃業したものも多く今はマンションが立ち並び歩道も整備されて有り難いのですが
なにかしら商業観光目的での改名に見え、本来の情緒をないがしろにしてる様にも思えます。
こんな風に「江戸情緒」そのものをウリ
すみだ北斎美術館の徒歩で百歩あたりに住んでいるんですが、わざわざ行く価値がある?って思ってたんですが(私がわかってないだけかもしれない)
このレビューを拝見し、あの美術館もまた「いったい何を意図してこんなもの建てた?」って思われる気がしています。
小布施の方も偶然行った事があるのですが足下にも及びません。江戸博も私的にはあまり評価出来ず、その何百分の一程度の規模の深川資料館の出来の方が意義がある様に思っています。とは言え江戸博は随分進化してるような話も聞くので
写楽などの浮世絵が西洋でウケた理由❗なるほど!そういう事でしたか!勉強になりました!m(__)m
北斎や広重の絵にゴッホやモネなどが影響を受けたのは有名ですね。
それにしても、阿部寛さんがご友人とは!すご〜い😵 テルマエ・ロマエ 似合っていましたね!
pipiさんの 素晴らしいコメントに こんな お返事しか出来ず 恥ずかしいですが、本当に為になりました!ありがとうございます😊
pipiさん 本当に貴重な情報を含め、造詣の深い考察 おそれいりました。とても面白く読ませていただきました!
「時代考証」について NHKの「へんなものを出さない」ための仕事 という 姿勢は本当に重要ですよね!
今 大河ドラマを楽しみに見ていますが、確かに、色んな資料や歴史に詳しいYouTuberさんらの解説などと照らし合わせても、史実とほぼ合ってる(土方との仕事はいくらか脚色されてましたが)ようなので、これからも安心して見られます!小和田先生の「史実として刷り込まれる」というお言葉も もっともですね。
pipiさんのご考察の通り、もし キャストやスタッフの皆さんが 河原さんの言葉を信じたのだとすると、河原さんのなさった事は 本当に罪作りですね❗
田中泯さんが 北斎の自画像を参考になさってるのは 予告を観た時から思ってました。でも、画狂老人て、行動が狂ってるという事とは違うと思うんだけど…田中泯さんに一任したからには、止める事は出来なかったのでしょうね。田中泯さんを起用するなら 北斎の絵をバックに散りばめながら、華麗にコンテンポラリーダンスを踊るというような 映像作品(ストーリーは特に無く)を作れば良かったのにと今ふと思いました(笑)
写楽などが、明治時代に欧州でウケたのは理由があります。ボッティチェリとダヴィンチは同じ工房の先輩後輩なんですが、ボッティチェリ時代までは油絵というものは輪郭線を描いてました。しかし、ダヴィンチは「実物には輪郭線などない」という美術史上の重要な発見をしまして。ここで新旧・伝統と新技法いろいろ確執生まれるわけなんですが、30年後のラファエロ達辺りから400年間くらい「輪郭線を描かない」事が油絵の常識となり、誰しもその技法で学んでいく事になるんですよ。
ところがやはり何百年も続くと芸術家達は「常識」に対して疑問を抱き始める。ダヴィンチ以前の絵画を見直す奴らが出てきます。ダヴィンチ以降の絵画は「写真のように、精緻で立体的」なんですがボッティチェリ以前は「輪郭線があり、平面的」なんですね。
それってまさに浮世絵などの日本画もそうじゃありませんか。日本画って平面的ですよね。だから「東洋に、ルネサンス以前に通ずる面白い絵があるぞ!」となったわけで。
印象派の画家達は「従来の(ダヴィンチ以降の)伝統的な技法を打ち壊す、新しい表現」を探していましたから、「光や季節の移り変わり」に情趣を見出す日本画や、西洋にはない構図を研究したわけですね。写楽だけが取り立てて評価された訳でもなんでもないですね。浮世絵人気は「絵画そのものとしての評価」というよりは「西洋伝統技法とまったく異なりながらも、西洋古典絵画との共通点を持つ技法として価値」が見出された訳です。明治当時は。
これ、僅か数十分で調べられた情報ですよ(笑)河原れんの作家としての能力は、甚だ疑問ですね。せめて「へんなものを世に出しちゃいけない!」って事を学んで欲しいですね。
NHKでは「時代考証とは、突き詰めれば「へんなものを出さない」ための仕事」と考えています。
小和田哲男先生は、多くの人々がNHK大河ドラマを「歴史再現ドラマ」として捉えている事を重視し「大河ドラマはもとよりフィクションであるが、映像になっているものが史実として刷り込まれるかもしれない。ゆえにドラマの制約の中でも『史実に近づける努力』はしなければならない」と仰っています。
シナリオチェックで「このような出来事はあり得ない」「この人物がここにいるのはおかしい」等などの確認が行われ、制作スタッフやキャストも脚本や資料を読み込んだうえで「この人はどういう人物なのか、どうしてこういう行動をとったのか」という質問をしてくるそうです。
HOKUSAIでは、役者さんもスタッフさんも、河原れんを信じ、彼女の語る内容が「時代考証済み」であると信じたのだと思います。
阿部くんも(主人の高校時代の友達なので、我が家では阿部くん呼ばわりすみませんw)柳楽さんも田中泯さんも「役作り」の深掘りはもの凄くきっちり出来ているのが感じられますもん。
惜しむらくは、彼らが信じこまされた「人物像」が河原れんの妄想の産物だったという事で・・・。
藍のシーンは田中さん発案ですか!
なるほど〜。監督からの要請は「なるべく台詞を少なくして、舞踏で表現してくれ」という事だったそうなんですよ。田中さんは、当然82歳の時の自画像(画号が画狂老人卍のやつw)をベースに役作りをしていると思われますから、絵具を被るという表現を思いつくのは仕方ない気もしますね。
本来なら河原れんが「待った!」をかける立場なのに、浮かれて褒めちぎった様子が思い浮かびますよ。それこそ私の憶測でありますが(笑)
おおー!
レモンブルーさん、先日仰っていた作品はHOKUSAIでしたか!
最終日に駆け込みで観てきました。劇場予告以外の情報無しで観てきましたが呆れましたね。
今、河原れんのインタビュー記事読みましたが酷いもんですわ。
「青年期の記録が無い」を言い訳に「僅かな情報を手掛かりに、絵から人物を探る」とか言ってますけど、北斎自身に関する情報は少なくたって「日本の歴史情報」は充分あるじゃないですか。
年代比較すりゃ簡単にわかる事すら確認せずに「きっとこうだったんだろう」「こう思っていたに違いない」って根拠の無い「憶測と妄想」だけで組み立てた大嘘歴史物ですよ。
それなのに記事には「歴史的資料を徹底的に調べ、残された事実を繋ぎ合わせて生まれたオリジナル・ストーリー。」と紹介されています。
いやぁ、レモンブルーさんも同じお気持ちで良かった!
ここまで酷いと、流石に腹立たしくなってきますね(苦笑)
御返信いただき、ありがとうございます。
全半生→前半生
でしたね。全部の半生って・・・(^^;
私はフィクションから入った口なので、実説を調べるようになって、あれ?蔦屋と春朗の頃の北斎はそれほど関わってなくない?と首を捻った次第です。
柳亭種彦は、天保の改革の犠牲者を描きたくて、引っ張り出されてきたのでしょうね。斬首されたという展開に元ネタがあるのかは知りませんけれど・・・
kasasu2004さん
共感とコメントありがとうございますm(__)m。kasasu2004さんもやはり違和感が おありなんですね?
調べて スッキリどころか益々 怒りが湧いて来ましたが…😅
蔦屋については今回 初めて知ったのですが、そんなにフィクションに多用されてるんですか!そうですよね。勝川派の絵師は…。史実でないことが史実のように定着するのは…よろしくないですね😤
蔦屋関係者や柳亭種彦の描写への違和感を、すっきり明快に言語化していただいた思いがいたします。
全半生の北斎(春朗)が初代の蔦屋重三郎に引き立てられたという設定は、有名人同士に関わり合いを持たせる手法でフィクションで多用されたためにいまでは史実のように定着してしまったのでは。実際には勝川派の主要絵師はみんな、蔦屋で仕事をしていましたよね。
nobusama2011さん 両方にコメントありがとうございます!
いやいや、たまたま北斎が好きだからです。他の史実上の人物の映画だったら こんなに調べたりしてません。「永遠の門」も観た時、違和感が有ったけど、ゴッホにそれほど思い入れが無かったので レビューしないままになってます😅
コメント追加、ありがとうございます。
コロナ早く収束して欲しいですね。私も小布施に行きたいです😭
NHKのドラマ見ました〜。宮崎あおいちゃん良かった。お栄のことはあまり資料がないですが、けっこう北斎の絵に筆を入れてるらしいですね。
田中泯が主演(W主演だけど)だから、彼のためにだけでも、見に行ってあげたい…。
愛のコリーダにコメントありがとうございます。
北斎も田中泯も好きなので、この映画は見たいと思っていたのですが、まだです。
どんどん上映時間が合わなくなってきたので、もう見られないかも。
でも、いろんな人のレビューを読むと、無理して見なくてもいいかなと感じました。
すみだ北斎美術館に、老齢の北斎と娘のお栄のジオラマがあるんですが、部屋の汚なさとかがけっこうリアルです。
映画よりレモンブルーさんの追記やコメントの方が圧倒的にためになりました。レモンブルーさんのような、北斎の知られざる一生を描いていたら★4.0は確実だったと思います。甘い物や引越しなど知らないことばかり!映画映えしそうなものを入れないでどうするんだ!
ただただ、好きな俳優をかき集めて感動'風"にしただけの映画。この構成を漫画原作の実写版でしたら、超大バッシングですよ。
コメントありがとうございます!
レモンブルーさんの素晴らしいレビューを見て、改めてこの映画の無謀さを知ることが出来ました。
今作は北斎の絵に対する熱い思い、若かりし頃からの才能、追求することを惜しまない探究心などなど北斎の良さが一切描けていない。制作陣は何を参考にこんな駄作を作ったのか、どうしたら北斎という人間をテーマにしてここまでつまらなく出来るのか。もう映画を作って欲しくないです。
歴史に対する私なりの考えを記しましたのでよかったらご一読ください。勿論個人的な一見解で独断と偏見に基づく見解に過ぎませんし、いろんな意見があっていいと思います。
生首の絵は、絹布に描かれていたんですか。キャンバスのようにも見えたけど妙に滑らかだと思ったんです。適当な事を書いてしまいました(-_-;)私は絵を嗜む、までにはいかなくて、ちょっとかじっただけで挫折いたしました💦
光陽さん コメントを両方にありがとうございますm(__)m
光陽さんの方にコメントしましたが、送信したら、消えてしまいました!💦戻るかもしれませんが、こちらにも書かせていただきます。本当に北斎は 史実のままで十分 その人間性の興味深さがあり、それ故に感動する人物だと思います。引越し好き?や甘い物好きな 北斎を田中泯さんで観たかったです!北斎は怒りや反骨精神ではなく、常に 好奇心と 向上心と 遊び心を抱いて 絵を描いていたと思います!なので、種彦のエピソードは、違和感があり過ぎて、調べずにはいられませんでした。
レモンブルーさん、こんにちは!
なんか脚本がいまひとつだったのは、きっと北斎へのリスペクトの欠如していたからなのでしょうね。
レモンブルーさんのレビューを拝見させていただき、もっと史実に忠実に映画化したほうがよほど面白い映画になったであろうと思いました。
ゆり。さん 共感をありがとうございます!ゆり。さんも絵をたしなむ方なんですね!私も若い頃絵を学んでいたので、絵を描きたい衝動とかは分かるんです。ただ、長続きしませんでした。なので、90年間もその情熱を持ち続け3万点もの作品を遺した北斎は 賞賛するしかないですし、作品も本当に素晴らしい! 私がもっと不満な所がある…と書いた中の一つがペルシャンブルーの事だったので、ゆり。さんが書いてくださっていたので嬉しかったです!本当にあのシーンには 呆れました!北斎があんな事するはずない!と思いますね。この脚本家は 絵を全く描かない方でしょう。
生首の絵は 絹を木の枠に張ったものの上に描かれているようです。和紙ではなくて、絹にも肉筆画は描いたみたいですよ。(北斎の娘というドラマで見ました) どういうことで 描いたのかは分かってないですが、とにかく、種彦とは無関係だと思ってます!
レモンブルーさん、凄いです。これほど北斎への情熱がある人が本作を酷評するのは当然と思います。私は全然詳しくないですが、写楽の絵が当時は不評だったのは私でも知ってました。日本画を描いたことは無いんですが、画材屋さんに油絵の具を買いに行った位はあり、絵具が色によって全然値段が違うとかは知ってます。画家が新しい絵具を手に入れたら、描かないでどうする?と思いました。
生首の絵は、他のとは紙の質感が違うなあと思ったんです。資料をコピーしたのかもしれないですね。お化けの絵だったなんて、種彦にも失礼です。