劇場公開日 2021年5月28日

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「描きたい絵を思いのままに」HOKUSAI bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5描きたい絵を思いのままに

2021年6月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

葛飾北斎の生涯を、ストーリーを4部構成に分けて1.2章の青年期から、3.4章の晩年期までを描いている。その青年期を柳楽優弥が、そして、晩年期を田中泯の2人が、W主演で演じている。

北斎に関しては、遅咲きの絵師と言われ、当時の浮世絵で名を成していた、喜多川歌麿や東洲斎写楽に遅れをとり、『富岳三十六景』が、世に出るまでの史実は、あまり残されてないと聞いている。そのため、若い頃の北斎は、謎に包まれてた絵師とも言われている。その分、本作では、蔦屋を介して、歌麿や写楽と共に、時代を歩んだ絵師として、都合よく自由には脚色もできたと思う。

1.2章では、名も無く、貧しい若い絵師・勝川春朗(後の葛飾北斎)の破天荒な生活から、絵師として開眼していく、サクセス・ストーリーが描かれている。その成功に導くのが、版元の蔦屋重三郎役の阿部寛。春朗の型にはまった絵師から、心の思いのままに描く本物の絵師へと、厳しさの中に温かみを持って導いていく。但し、阿部寛の顔がアップになる度に、浮世絵のそのもの絵の様に見えてきて笑った。(笑)

3.4章からの晩年は、弟子もたくさん抱える中、江戸の町人文化の一役を担う存在まで登り詰め、年老いても尚且つ、ギラギラした目で創作する意欲は劣ることなく、浮世絵に立ち向かう老翁の姿が描かれている。特に最後の『生首』と『波』を描くシーンは、田中泯にしかできない、ほとばしる情熱と絵師としての深みを観る者に訴えてくる。

自分も絵画は好きで、美術展にも出かけるが、その大半は印象派を中心とする西洋絵画が多い。改めて、本作を通して、浮世絵の繊細さ、一発勝負の筆入れ、明瞭な色彩、版画による増版等を目の当たりにし、ゴッホやモネの巨匠達も強く影響され、魅了された理由が、少し紐解けたように思った。

ストーリー展開という点では、やや盛り上がりに欠け、時間的にも長すぎたかな。俳優さんも中心人物以外の配役陣に、物足りに無さは感じた。

bunmei21