「やがてくる時代の波を描いて待つ」HOKUSAI Masuzohさんの映画レビュー(感想・評価)
やがてくる時代の波を描いて待つ
予告から面白そう
少なくともこのキャストならと期待して観賞
田中泯さんは「アルキメデスの大戦」での
主人公に敗れつつも自らの思想に誘引する
印象的な演技が印象的でした
この人の存在感に対抗できる配役が
なされていたと思います
葛飾北斎の史実に沿った一生と言うよりは
現代にも通ずるアーティストの葛藤と挫折
それを見捨てなかったパトロン達
封建社会に画に自由を求める男たち
といった事がテーマの映画に感じました
序盤のフィクション部分が冗長とかって
レビューを観ましたが
映画の時点でフィクションでしょうと
歌麿と写楽と北斎が一同に会する場面なんて
あったわけないのはすぐわかります
外国受けもしそうな映画全体のビジュアルなど
前半も十分楽しかったです
柳楽優弥から田中泯にパートが変わる瞬間は
飛びすぎな印象もさすがに受けましたが
まあそう気になる事はありません
町人文化を奨励した田沼意次時代から一転
松平定信が寛政の改革で倹約令を進めたのは
それなりに理由があって
人ばかり江戸に集中し地方の田畑は荒れ
貨幣は江戸外に流出しインフレが止まらず
ついに大飢饉も加わって幕府の財政が
どうしようもなくなり江戸をつまらなくして
地方に人を返す狙いもあったようです
作中では自由な創作をお上が許さない世が
変わってほしいと言ったまとめ方してますが
当の北斎は徳川家斉に呼ばれて絵を描きに行ったり
していたようですし後半も十分フィクションなのです
でも脳卒中で倒れてもすぐ旅に出て赤富士を描き出す
とこあたりは脳卒中の機能回復は早期リハビリなので
ちゃんと合っていると思いました(笑)
実際も薬を処方して自力で治療したり
北斎は相当すごい知識を持った人物だったようです
キャストも豪華だし映像もスクリーンで映える
ものでした
映画観を取り巻く状況的になかなか客が入りづらい
ところですがおすすめしたい作品です
北斎の特別展は7月から東京であるとか
コロナが落ち着いたら是非行ってみたいものです