「ヤキが回った角川春樹の老残映画。」みをつくし料理帖 お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)
ヤキが回った角川春樹の老残映画。
23歳の松本穂香ですが、10代なかばの純真さと一途さを演じていて、表情がクルクルと変わる愛らしさ多彩さは見事なものでしたが、このお話は松本穂香のファン以外にはキツい、というか痛すぎる話でした。
この出来ばえでは、角川春樹のおそらく最後の作品になるしかないのだろうと思いますが、一言で言って、ユルユルでガバガバな酷い話です。
下手くそさを誤魔化すために「お笑い」に走る、一群の下手くそ芸人の集団が日本には存在しますが、本作に登場する藤井隆などもその典型。
彼一人で、この映画を「よしもと新喜劇」の出来損ないみたいなドタバタに貶めており、こういう演技しかできない人間をキャスティングした角川春樹の眼力の衰えには驚きを隠せません。
たとえキャスティングしていても、彼の演技力を見て、登場画面をオールカットするぐらいの蛮勇を、かつての角川監督ならば揮えたはずですが、そういうことができないのなら、監督もヤキが回ったとしか言えないと思います。
江戸時代の日本料理の設定なのに、なんで幕末に日本に入ってきたはずの西洋ニンジンを、和ニンジンの代わりに使うかなぁー。
しかも大阪出身の料理人という設定なのになぁー。
時代考証もさることながら、そもそもあの画面では、オレンジ色のニンジンではなく、真っ赤な和ニンジンでないと活きないでしょ、と、細かな点、美的センスの欠如まで、ほんとに残念な限りでした。
収穫は、松任谷由実の作曲になるテーマ曲の美しさ。
これだけは映画を離れても十二分に美しい作品で、この映画の功績は、松任谷由実のテーマ曲を産んだことが唯一の功績になるのではないかと思った次第です。
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