「アンネの日記と蝶々と靴紐」ジョジョ・ラビット kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
アンネの日記と蝶々と靴紐
いきなりビートルズとヒトラーの観客の熱狂ぶりを皮肉たっぷりに描いたOP。いやはや、これで心をいきなり掴まれました。しかも映画では聴くことも難しいドイツ語バージョンの「抱きしめたい」なのだ。さらにヒトラーユーゲントに入ったジョジョたちの滑稽ともとれる訓練など、ぐいぐい引き込まれる。あぁ、それでもって手榴弾のせいで顔に傷が・・・
このコミカルな演出満載の序盤をずっと続けてくれたら満点評価になったかもしれない。しかし、傷ついたジョジョが家で静かに暮らすようになってからは子供目線の真面目な作り。時折空想の友達アドルフ(監督本人)が登場する部分だけくすくす笑える程度。匿った17歳のユダヤ人少女エルサとの奇妙な共同生活が始まり、徐々に成長していく物語でした。
多分、タイカ・ワイティティ監督の選曲センスは好みに合うのですが、ビートルズのインパクトがあまりにも大きくて、だんだん尻すぼみ。途中、「タブー」という曲が流れるのですが、ちょび髭の加藤茶を思い出してしまいました。どこかでボズ・スキャッグスの「JOJO」なんかを流してくれると最高だったかも♪
反戦、反ナチの母親スカーレット・ヨハンソンの愛情。さすがに10歳の子供にはその意思が伝わらない。ジョジョが成長して母を思い出すようになってから、その愛情の深さが伝わってくるのだろう。彼女の美しさも蝶々のように振舞っていたからこそ、母の愛がしみじみ伝ってきた。ジョジョが靴のひもをうまく結べない伏線回収も見事でした。
何と言っても美味しいところを持って行ったサム・ロックウェル。ユーゲントの指導者として、そしてジョジョを温かく見守る姿。ナチ親衛隊の闖入によってユダヤ少女エルサがピンチになったときも救ってくれたし、終盤のジョジョをユダヤ人として突き放すところも見事。『リチャード・ジュエル』に続き、惚れてしまいそうになる(ゲイ的なものじゃなく)。