「居場所を強制されてはいけない」ジョジョ・ラビット Movieアパートさんの映画レビュー(感想・評価)
居場所を強制されてはいけない
タイカワイティティが自ら演じるヒトラーを空想の友達として持つ少年の話、と聞いて 一体どんな話なんだろう… 全く想像がつかん笑 と思いながらも評判の高さに期待を膨らませて鑑賞。
ヒトラーが出てくる以上、歴史のダークサイドの香りを排除した話を語るわけには行かない、だからこそタイカワイティティという監督の資質の中にこの話がどう落とし込まれているのか というのが大変興味深いポイントだったが、これまた非常に独特なバランスのお話だった。
この話のテーマの個人的な解釈としては
自分の居場所というものは、周囲の環境に多大な影響を受けてしまう。 が、それでも人は最後は自分の居場所を見つけることができるのだ。
といった内容だろうか。
(めちゃくちゃ乱暴だが…)
巨大な空気が国全体を覆っていたであろう、当時のドイツ帝国の中において、その空気の中に自分の居場所を必死で見つけようとしていた少年ジョジョが最後に見つける自分の居場所は… 好きな子と踊る!
と書くとえらいお気楽な印象、というか実際発生する事態に対して話のトーンは過剰に重たくならないのがこの映画の美学なのだが、演出と役者陣の技量によってお話の 切実さ は全く損なわれないのがこの映画の魅力の大きな部分だろう。
タイカワイティティの資質が存分に生かされた作品であるのは間違いない。
役者陣はみんな最高にこの話にマッチした素晴らしい演技を披露しているが、やはり何と言ってもスカーレットヨハンソン!
この魅力はなんなんだ!
素敵なお母さん像として完璧に近い、そしてだからこそ映画の途中に待ち受けるショッキングな展開がお話を強烈に押し進めていく。素晴らしかった。
あとはタイカワイティティ自ら演じるヒトラー。
ノリノリでやってるのが見てて伝わってくる奇怪な雰囲気が映画の雰囲気を壊さないながらも大暴れしてて印象的。
不満点 というとあれかもだけど個人的には、ジョジョの顔面の怪我の度合いが 思いの外軽傷じゃない…? という印象はあった。ジョジョが自分の居場所について考える一因となる顔の怪我だけど、正直そこまで酷い怪我ではない気がしてしまったのは若干ノイズとなった。
とにかく、他の映画ではまずあり得ない独自の切り口を、ここまで見易くまとめらるタイカワイティティの手腕はとても凄い。トロントでの観客賞受賞もうなずける一本だった。