「あの頃の思い出がピカピカに磨かれて戻ってくる」シン・ウルトラマン CINE LADAさんの映画レビュー(感想・評価)
あの頃の思い出がピカピカに磨かれて戻ってくる
科学特捜隊のバッチを胸に付けてレイトショーに臨んだ。科特隊は「禍特対」と字面を変えて現れた。マークは新しくなっていた。でも胸に付けたマークは、やはり流星であった。
ただただ楽しかった。怪獣改め「禍威獣」は、なぜか日本にしか現れないことを逆手に、日本に現れるしかないウルトラマンを巡って外交問題に発展したりもする。一般的にヒーローが正体を明らかにしないのは、悪人に利用されてしまう可能性があるからだと聞いていたが、そういう意味では日本国政府も諸外国も悪と言うことだろう。
ただただドキドキした。知っているウルトラマンとは少し違うけど、無駄に筋肉隆々だったりもせず、闘う姿は地球の重力なんかに囚われない。長澤まさみ演じる浅見が発した「キレイ…」な銀色の姿で、バッタバッタと敵をなぎ倒す。尺の問題もあるだろうが圧倒的だ。強い。スペシウム光線はあの頃のディテールそのままだし、八つ裂き光輪の切れ味は抜群だ。呆気ないほどスパスパ切れる。なんと言っても人が入っていないから背中にチャックはないし、この隙間から覗いているのかしら?なんて訝しむ穴も見当たらない。なぜならウルトラマンは外星人なのだ。神でなく、命ある生命体。空に飛び立つ時の音も含めて、見るだけでワクワクした。ウルトラマンが帰ってきた。
最終の敵に対して最後の最後に見せたあのシーンには、それまでのイメージを覆す意味を持たせた。同じく最終の敵は、外星人でもなければ禍威獣でもなかった。次々とアップデートされていく世界観に翻弄され、度肝を抜かれた。まるでCGのような表情の長澤まさみに圧倒された。
騙された。粗はある。たくさんある。でも上映中は、その粗がさほど気にならなかった。つまり騙された。仕方がないじゃないか。IMAXで観るウルトラマンの姿に、純粋に応援しているおじさんがいたのだ。人間なんて、本質の部分はそんなに成長しないものなのだろう。
そして何よりも、これほどに作り手の愛が身に沁みてくる作品は久し振りに観た。久しぶり?いや、観たことがないのかもしれない。好きだ嫌いだ関係なく、愛に溢れる作品はそれだけで評価に値すると思うのだ。
騙されなかったのは、エンディングの主題歌のみ。商業映画なんだから人気者を使うことに文句は言わない。こんな所は大人になったので分かってしまう。でも、最後の最期に「胸に付けてるマークは流星」と流れてきたら、どんなに感動しただろうか…と思って止まない。