「往年のファンならぜひ劇場で!」シン・ウルトラマン おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
往年のファンならぜひ劇場で!
その作品に触れたことはなくとも、その名を知らぬ者はいないほど、抜群の知名度を誇る昭和のヒーロー・ウルトラマン!その新作ともなれば、どのように作っても賛否両論は避けられません。それでも熱い思いをもって本作を世に送り出してくれたことに感謝しかありません。ありがとう庵野さん!ありがとう樋口監督!懐かしく、それでいて新しいウルトラマンに出会えて感無量です!
ストーリーは、「禍威獣」と呼ばれる巨大生物の襲来を受け続ける日本に、突如飛来した光球から現れた銀色の巨人・ウルトラマンが、禍威獣や外星人から地球を守るというもの。そこに、対策チーム「禍特対」の人間関係、政府の策略、各国の思惑などを絡め、物語に奥行を与えていきます。往年の「ウルトラマン」の基本構造はそのままに、現実的視点を加えて、現代風にアレンジした脚本のおかげで、見応えのある内容に仕上がっています。
まずは、「ウルトラQ」を思い出させるオープニングからのタイトルですでに胸熱。そこから禍特対誕生までの経緯を足早に説明するのですが、ゴメスやマンモスフラワーやペギラなどを登場させてウルトラQからの流れをトレースし、それをエヴァやシンゴジを想起させるテンポのよいカットでつなぎます。往年の特撮ファンをニヤリとさせる演出に、期待値は爆上がりです。
そして、早くも禍威獣が登場してボルテージが上がったところへ、さらに銀色の巨人が登場しての格闘戦!開幕早々に観客の心を鷲掴みにする展開に大満足です。IMAXで鑑賞したのですが、視界いっぱいに繰り広げられるバトルシーンの迫力、令和の時代にリファインされた造形、禍威獣やウルトラマンの質感まで表現するCG技術に魅了されます。それでいて特撮の雰囲気をあえて残しているかのような映像美が素晴らしすぎます。
登場する禍威獣や外星人も、パゴス、ネロンガ、ガボラ、ザラブ、メフィラスと、これまた懐かしい面々でうれしい限りです。登場順も昭和ウルトラシリーズをしっかり踏襲しています。当時は着ぐるみの流用から外観が似ていたことを逆手に取り、本作ではCGコスト削減も兼ねて、外星人の策謀という設定で無理なく脚本に落とし込んだ庵野氏の手腕には脱帽です。
また、本作では、音へのこだわりも半端ないです。普段は劇伴に関心がいかないことが多いのですが、本作は体が勝手に反応するほど、昭和ウルトラシリーズの楽曲がふんだんに使われています。そのこだわりはSEにも及び、ウルトラマンの登場シーンはもちろんのこと、スペシウム光線や八つ裂き光輪、果ては電話の着信音まで当時のままで、庵野氏を始めとするとスタッフのこだわりをこれでもかというほど感じます。
終盤のゼットン戦は、これまた昭和ウルトラマンを彷彿とさせる見事なアレンジです。ゼットンに敗れ、人間との共闘から勝利を手にするものの自らを代償とするウルトラマン、そんな彼を連れ戻そうとするゾーフィ…というシークエンスはそのままに、相容れない立場のゾーフィに自らの思いを語るウルトラマン、彼を神永と分離するゾーフィに胸が熱くなります。そして、この間のカメラワークからエコーのかかり具合まで、昭和ウルトラマンを忠実に再現!
もうDNAレベルで喜びが湧き上がるほどの本作でしたが、あえて一つだけ不満を挙げます。それは、ウルトラマンが人類と地球のために命を捧げてもいいと覚悟した理由です。口では理屈として語っていましたが、その根幹となる熱い感情のようなものを、禍特対のメンバーなり、助けた人々なりとの交流などから描き、理屈ではないもので観客に共感させてほしかったです。2時間の尺では難しかったかもしれませんが、そうすればストーリーにさらに深みが出たのではないかと感じました。
主演は斎藤工さんで、ウルトラマンとしてのやや無機質な演技がよかったです。脇を固める、長澤まさみさん、西島秀俊さん、早見あかりさんも、それぞれの持ち味を生かした禍特対メンバー役を好演していました。また、山本耕史さんは、知的なメフィラス星人役にピタリとハマった、お見事な演技でした。
ウルトラマンファンなら間違いなく楽しめる本作ですが、初見の方でもすぐに世界観に浸れる良作です。本作を通じて、ウルトラマンファンがさらに増えたらうれしいです。最後にもう一度、庵野さん、樋口監督ありがとう!「シン・仮面ライダー」も大いに期待しています!
素晴らしい! 当時のTVシリーズとの関連を逐一伝えてくれるナイスレビュー! このレビューも観る前の私をワクワクさせる原因となったレビューの一つです! ありがとうございました。
「ゾフィゾフィゾフィゾフィ…」ほんと、当時のまんまで、嬉しくなっちゃいました!