「壮大なスラップスティック」シン・ウルトラマン 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
壮大なスラップスティック
映画「シン・ゴジラ」を鑑賞したときのような感動を期待したが、何故かしら、何も感じなかった。樋口真嗣監督と庵野秀明さんのコンビは同じなのに、本作品には「シン・ゴジラ」にあった重厚感がない。ずっしりした革ジャンとペラペラのウインドブレーカーくらいの差がある。
「シン・ゴジラ」で唯一違和感を感じたのは米大統領の特使カヨコを演じた石原さとみである。演技がどうのというよりも、若すぎたのだ。カヨコ以外は、長谷川博己が演じた主役の矢口蘭堂官房副長官をはじめ、それぞれに人間的な深みがある役だった。そしてカヨコも矢口蘭堂との関わりの中で、不安や恐怖を吐露し始め、骨太な人間ドラマとしての作品を支えることになる。
本作品で長澤まさみが演じた浅見弘子がカヨコに似ていた。しかしカヨコが次第に世界情勢が絡む問題の本質を理解し始めるのに対し、浅見弘子はずっと同じノリである。人間的に軽いままなのだ。その軽さが、本作品そのものの軽さとなってしまった。
主演の斎藤工や有岡大貴、早見あかりはそれなりに頑張っていたが、いかんせん浅見弘子の軽さをカバーするまでにはいかなかった。長澤まさみはスタイルのよさが取り柄みたいな変な展開には違和感しかない。
もしかしたらギャグ映画だったのかと、はっと気づいた。ウルトラマンと宇宙人が日本の居酒屋で交渉をしたり、宇宙人と総理大臣が書面の覚書を交わしたりするのは、たしかにギャグだ。であれば、長澤まさみのアホなシーンも頷ける。本作品は壮大なスラップスティックなのだ。
まあ今回は樋口さんが監督、庵野さんは脚本ですからね、
確かシン・ゴジラは庵野さんが監督でしたよね。
岡田斗司夫先生がそれなりに前でしたが、
「樋口君が監督だから、あまり期待出来ないと思う。」とおっしゃっていたのを、以前動画で見ました。
はたしてその通りだったので、良い意味で予想を裏切って欲しかったのですが、
残念です。(映像は楽しませてもらいました。)