「これで「売れてる作家」設定なのが謎。」君がくれた恋のシナリオ alalaさんの映画レビュー(感想・評価)
これで「売れてる作家」設定なのが謎。
人としてオワてる作家が主人公の、下品×下品、もろアメリカのお下品コメディといった感じ。
ロマコメというより、ただの下品な下ネタエロコメディに恋愛挟んだだけという程度。出てくる人出てくる人、見事なまでにほぼ全員下品。
主演のクリス・エヴァンスは、ほんとこういう下品な役平気でやるなぁ。
確かクリスの母親が、今までクリスが演じた中で一番素に近いと思うのはどの役?と聞かれて『ルーザーズ』のジェンセンと答えてたけど、これもお下品キャラ。素が相当下品なんだろな…笑
本編中、ほぼ主人公の語り(ナレーション)で、心の声がずーっと喋ってるんですが、序盤で「愛に近い気持ちを感じた」と言って出てくるのが、ベビーシッターのクソガキとのセフレ関係。
その後も、恋愛=セフレみたいな、性欲と愛の見分けすら付かないガキの状態のまま大人になってる奴が主人公だから、作中ずっとセフレ、セフレ、セフレの嵐。
とはいえ主人公もそれに気付いてないわけではなく、セフレはいっぱいいるけど「作家として本物の愛を描きたい!(でも愛って何だろう…)」状態。
ママが自分を置いて出てってしまったことでそうなった、と言ってるけど、言うてママが出てった人、ママに愛されなかった人って世界中に結構な割合でいると思うんだけど、ここまで拗らせてる奴も珍しいような。ママのせいにしてるだけで、こいつが単に元々ダメ人間だったようにしか見えない。
しかもグレてる心を表すために、後ろで煙草吸ってる自分が出てくるんだけど、なんと子供の頃から。子供に煙草吸わせる演技ってアメリカで大丈夫なのか?よくOK出たな…
でも元気ない時に後ろでグデッてる自分がちょっと面白い。
結構ヤバめの台詞も色々あって(ありすぎて)批判が出なかったのが不思議。大して売れてないから良かったのかな…
韓国ドラマの話をしだしたら「やめろ、耳が腐る」とかね。韓国アイドルの歌がアメリカでも一応?流行ってるらしいけど、一部のアメリカ人は今耳が腐り落ちてるのかもしれない。
Amazonプライムビデオで見ましたが、19:29辺りでクリスの若い頃の写真そのまま使ってて二度見してしまったw 何かの番組でイジられてた写真。
クソみたいな映画だけど、演出は良かった。この手法、スカーレット・ヨハンソン主演の『私がクマにキレた理由』と似てるけど、もしかしたら安く済むのかも。舞台と似たような感じで、場面切り替えをせず大道具を動かして場面転換するやり方。
俳優陣も自然体なのか、たまに素で笑ってそうなシーンも。
低評価とはいえ良いところは色々あるんだけど、ただ本当に全体を通して下品過ぎて、せっかく良いこと言っても「なに急にw」って感じになってしまうのが残念。
下品でバカでクズな主人公が、愛する人に出逢って変わっていく…ってストーリーが描きたかったのはわかるんだけど、最初が底辺すぎて全然感情移入もできないし、応援しようって気にもならない。
多分これ、クリス・エヴァンスが元々気弱そうな顔してるからまだマイルドに感じるけど、他の俳優だったらもはやコメディジャンルとしても地雷だっただろうな。いや、どのみち評価は悪いんだけど。
今の自分がゴミクズ過ぎて、まあ酷い生活はしてる(作家としては一応売れっ子)けど、それでもそんなクズの自分でも愛してくれてる人がいるのに、それがわからず余所の女に横恋慕して、フラレて逆ギレ。相手の女には迷惑かけて、愛してくれてる人達のことは蔑ろにする。だって、だってと愛を理由に言い訳ばかり、人生初の愛だから何でも我儘が通ると勘違い。おっ、これは不倫する奴らの王道だぞ。
運命の相手が本当にいるとして、それがこんな嘘つきで人に迷惑かけて蔑ろにしても言い訳ばっかで反省もせず、自分さえ幸せになれればオールオッケーみたいな奴だったら最悪だな。
友達(?)のスコットがめちゃくちゃいいヤツ過ぎて、スコットの恋愛がうまくいったことの方が、主人公の恋愛云々より嬉しい。良かったね!主人公もうお前どっか行け!
あと、アベンジャーズシリーズでファルコンを演じ、今キャプテン・アメリカを演じてるアンソニー・マッキーは、実はクリスとの共演が多く、本作でも出てきます。こいつも最低な主人公が引くほど下品で最悪なんだけど、まあこっちは恋愛云々に関わってこないしご愛嬌なのかな。
あと相手役の女性ミシェル・モナハンの演技がとても良かった。この人、どっか他で見たことあるけどどこだったかなと思ったら、ミッション・インポッシブルシリーズに出てた人なんですね。よくこんな作品に出てくれたな(そんなこと言うな)。
クリスは「最低最悪だった人が愛を知って変わる」みたいな物語が好きみたいですね。でも最低最悪具合が酷すぎて共感呼べてないよ!
こういう物語、ティーン向けからアメリカでは多いみたいだけど、なんというか、弊害だなとも思う。愛はロマンチックで永遠に燃えていて、そのためなら何を捨てても良いみたいなやつ。日本でも江戸時代に流行ったけど、これが多くの自殺者を生んだ(一緒に死ねば来世では伴侶になれるって話だった)。
もちろん、そんな幻想が流行るくらいに現実が辛かったのだから、宗教を叩くより先に現実社会の方を何とかしなきゃならないんだけど、こういうロマンス神話みたいなのは一種のカルト宗教みたいなもんで、現実が実際にそういう社会じゃないなら信じても行き着く先は悲恋でしかなく、その悲恋すら「ロマンチック」にしてしまう思考回路がよりロマンス神話をカルト的にする。信じてれば気持ちだけは幸せでいられる、でも現実で努力することはない。だって努力するには現実を見なきゃいけないし、現実を見たら信じられなくなるから!
宗教的な思考回路を生む洗脳は、世界中至る所に転がってるし、アメリカは特に根深いんじゃないかと感じた作品でもあった。そういう意味では高評価だよ、クリス。早くその呪縛から逃れた方がいい。
(でも実生活では去年結婚したらしい。おめでと。)