劇場公開日 2020年10月2日

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「家族を心底愛してくれるおばあちゃんの大切さ」フェアウェル shunsuke kawaiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0家族を心底愛してくれるおばあちゃんの大切さ

2020年12月27日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

家族親類の中にただひたすら純粋に自分を応援し、愛してくれる大きな存在がいるということで、家族親類が連帯することができるということがひしひし伝わってくる映画です。

住む場所が離れていても、孫を愛し、健康や将来のことを気遣ってくれて、電話でいつでも生活相談ができる優しいかわいいおばあちゃん。

おばあちゃんのもとを訪ねて帰るときは、いつも寂しくて涙が出てくる。いつもそばにいて欲しいのに離れ離れで寂しくて仕方がない。ドラえもんののび太のおばあちゃんもまさにそんな存在。

中国的な家族の連帯の特徴を描いているというよりも、このおばあちゃんのような存在がいることこそが、家族の連帯にとっては一番重要なことだと思わされます。

家族といえば、ともすれば、自主自律の足を引っ張る厄介で面倒な存在という悪い面がクローズアップされることがありますが、この映画は正反対。家族肯定映画です。寂しかったり辛いことがあっても励ましてくれ、勇気づけてくれる優しくて可愛いおばあちゃんがいるだけで、離れ離れで疎遠だった親戚はいつの間にか仲良く遊ぶ楽しい仲間に変身していき、単純に家族はいいものだということに自然となっていく。素晴らしい存在感、その重要さが伝わってきます。

そして、中国長春の街並みは昼間も夜もたくさんの人が出歩いている。夜はネオンが派手でいつまでも露店が出て賑やかな感じで、徹底的に寂しさを消し去る都市環境。共同住宅も凄まじい広さとデカさ。とにかく人、人、人。

依然白人社会のアメリカで(というかひとえに白人といっても、みんなヨーロッパ各地から親類から離れてやってきた移民。だから元は一緒)本来の自分を殺してアメリカ社会に無理して溶け込もうとする両親によそよそしさを感じ、周りは白人だらけの街頭や地下鉄車内のシーンから伝わってくるように、どこか違う場所にいるような疎外感を感じている主人公にとっては、優しいおばあちゃんのいる中国こそが自分のいるべき場所だと帰省中に薄々気づき始めています。

アメリカに帰る際、おばあちゃんとの別れで寂しさのあまり主人公が涙を流し、母親も寂しくて涙を流しているシーン。生まれ故郷の中国から離れたくない。おばあちゃんとの別れという意味だけでなく、安心できる故郷、ホームグラウンドからの別れでもあるという別れのシーンが泣けて泣けて仕方ないです。

屠殺100%