「中国の勢いを感じさせるアメリカ映画」フェアウェル 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
中国の勢いを感じさせるアメリカ映画
ルル・ワン監督は中国生まれの米国育ち、その実体験に基づく劇映画の主演に、やはり父親が中国人の米国人女優オークワフィナを起用。米国文化で育った“現代の華僑”が、中国に里帰りして親類たちと過ごし、祖母に余命告知をするかどうかで対立するというドラマが、心に染みる物語に仕立てられた。アメリカ映画でありながら中国系のスタッフ・キャストが米中のカルチャーギャップをユーモラスに描く本作は、米映画界の多様化と差別撲滅の追い風を受けた面もあるとはいえ、やはり中国という国の勢いを感じさせ、日本の観客として羨望と嫉妬を禁じ得ない。
描かれるのは、東洋と西洋の死生観や家族観の違いであると同時に、中高年と若者の世代間の価値観のギャップとしてとらえることもでき、若い世代ならむしろその点でより共感できるのではないか。大方の予想を裏切るラストも心憎い。あの「ハッ!」が海を越えて届くのも、映画ならではの素敵な嘘だ。
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