「正義感と保身」オフィサー・アンド・スパイ 赤ヒゲさんの映画レビュー(感想・評価)
正義感と保身
ロマン・ポランスキー監督作品で個人的に好きなのは、「ローズマリーの赤ちゃん」(68)と「ゴーストライター」(10)ですが、今作は、「ゴーストライター」に似た重厚な雰囲気がよかったです。19世紀末、実際にあった史実に基づく物語は、100年以上過ぎた現代にも通ずるものを感じました。人が人を裁くことの難しさだけでなく、民族間の根強い差別意識は、今まさに世界の紛争の根源的な原因になっているように感じます。軍事施設に反撃を加えたというニュースの中で住居や病院が破壊されている映像を見ていると、いたたまれない気持ちになります。今作の主人公・ピカール中佐(ジャン・デュダルジャン)の正義感以上に、人間の本質的な愚かさを見せつけられて、重苦しい気持ちになりました。
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