劇場公開日 2022年6月3日

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「暗くて魅惑的な建物の中、部屋の中マニア御用達」オフィサー・アンド・スパイ 屠殺100%さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5暗くて魅惑的な建物の中、部屋の中マニア御用達

2022年8月7日
iPhoneアプリから投稿

ポランスキー印(じるし)とは何か?

ある特徴的なディテールにそれは出ている。暗ぼったい建物の中を魅力的に描くという点だ。

螺旋階段の踊り場に玄関のあるアパート。これはポランスキーの映画、『テナント』や『ローズマリーの赤ちゃん』や『反撥』や『ナインス・ゲート』にも出てくる。こういうフランス、ヨーロッパならではのアパートが今回もたくさん出てくる。

ポランスキーは間違いなくアパートマニアだ。
あと、通りからアパートの建物に入る前のデカい扉。
扉に入ると大家か守衛がいる。

デカ扉と大家か守衛もセットでポランスキーの映画によくでてくる。

軍の防諜部の建物だって螺旋階段、守衛も映す。

螺旋階段の手すりや壁の色や模様階段に敷かれた絨毯などが、異様で猥雑な闇の深い感じ、かつクライブ・バーカーのホラー小説の世界のような魅惑的なムードを醸し出している。

部屋の中は暗い。黒を基調にした木製の家具、調度品が並び小綺麗で、生活感があり、阿片窟のような?リラックスできそうな雰囲気が漂っている。

フランスの暗くてこ綺麗で不気味なアパートが大好きな人は最高に楽しめる。

機密情報省の中も、書棚や資料棚に溢れて、飽きない。
資料を納めた沢山のポスト口は素晴らしかった。

筆跡鑑定の事務所の写真棚も素晴らしい、写真棚から資料棚、そして結びを解いた後に出てくる沢山のゴミ屑のような資料。ペリペリパリパリ音を立てながら、ボロ紙の資料を几帳面に扱う様はなぜか心地よい。

ポランスキーは、常に建物や部屋のなかを魅惑的に美的に描く点でほんとにいつも素晴らしい。ある特定の建物や部屋の中を描いているだけなのに、想像が膨らんでパリ全体がものすごく魅惑的な街のように思えてしまう。空から俯瞰した街並みははっきりいうと出てこない。石畳の道路とちょっとしたカフェや酒場、法廷や将軍の部屋といったあくまで建物の内側が専門なのだ。それなのにパリは楽しくて魅惑的な街に思えてしまう。

社交の場である演奏会場では、ポランスキーもチラッと出ていた。部屋の中の綺麗な調度品として。部屋の中のディテールの一部として。

建物や部屋の内側こそポランスキー映画の醍醐味であり、この映画はその点をもって最高の映画である。

屠殺100%