「ただ正義のために」オフィサー・アンド・スパイ ゆみありさんの映画レビュー(感想・評価)
ただ正義のために
1894年に起きたドレフュス事件を史実に基づいて描いた映画。事件の名前だけは知っていたが内容はまったく知らなかったので、興味と知識欲から映画館に足を運んだ。
スパイの罪を着せられ終身刑として離島に収監されたドレフュスの無実を突き止め、正義のためにフランス陸軍そして自らの上司達と戦ったピカール中佐の話である。
権威失墜を恐れ、またユダヤ人への差別意識から冤罪を決して認めようとしないフランス陸軍は、まさに(腐った)権威の権化みたいなもので、ドレフュスの無実を主張したピカールもまた陸軍の裏切り者の汚名を着せられ収監されてしまう。辛いのはユダヤ人への差別意識は一般的なもので、民衆までもがユダヤ人ドレフュスがスパイであることを盲目的に信じ込み、ピカールの敵に回ったことである。
しかしピカールは新聞社や出版社などのマスコミ、作家ゾラなどの知識人を巻き込み、最終的にはドレフュスの無実を勝ち取りフランス陸軍に勝利する。
興味深かったのは最後の場面である。事件が起きてから12年後、釈放されてからは数年後、ピカールとドレフュスは再会する。正義のために戦ったピカールはその功績を認められ(たのかな?)軍事大臣へと出世を果たす。一方陸軍への復帰が認められたものの、その8年のブランクはそのままに軍に復帰しただけのドレフュス。ドレフュスは収監されていた8年分の年功(冤罪なのだから)は認められるべきだと抗議をするためにピカールのもとに訪れたのだった。ドレフュスにとってピカールの役職からすれば、彼のとった勇気ある行動、戦いは当たり前のことだったのかもしれない。大事なのは真実と正義であり、ドレフュスはピカールに一言の礼も言わなかった。無罪を勝ち取ったピカールとドレフュスの感動的な再会はなかった。これもまた文化的違いによる価値観の相違なんだろうか。そうか、ユダヤ人のポランスキーが監督だから、これってユダヤ人的思考法、ユダヤ人的行動として遠慮なく描いたんだろうね。多分。
この場面が僕にはおもしろく、これでプラス0.5。