「良い映画」オフィサー・アンド・スパイ stoneageさんの映画レビュー(感想・評価)
良い映画
「ドレフュス事件」というと、昔、世界史の授業で出て来たなぁ…ぐらいの記憶しかありません。どんな"事件"だったかなんて、全く覚えていませんでしたが、ユダヤ人を標的にした冤罪事件だったわけですね…ふむ(笑)
正直、"反ユダヤ"というのは、宗教的な背景が我々日本人とは違うので、感覚的に分かりづらい…いつまで経っても、これだけは。ホロコーストとかになると、宗教云々を置いといても、ヒロシマ・ナガサキと同じで、無差別大量殺戮に対して、色んな感情が湧き起こって来て、共感しやすいんですけどねぇ…。
さて、この作品…
ラスト、やっと自由の身になったドレフェスが、自分の無罪を証明するために命まで賭けてくれたピカールに、お互い牢屋にぶち込まれて軍籍の空白期間が生じていたにも関わらず、釈放された後、(その空白期間に応じて)どうして君(ピカール)の方が"位(くらい)"が出世してるんだ?僕(ドラフェス)だって同じく階級が上がっていても良いではないか?と詰め寄るところが、なんとも可笑しかったです。ドレフェスの、そういうところ…利己的というか、何と言えば良い?…こういうところって、ユダヤ的だったんでしょうか?自分の命や人生を、いわば他人のために尽くしたにも関わらず、こんな事言われたら、そりゃ、もう2度と会いたくはなくなるわな…(笑)そりゃそうだ…。
オープニング、ドレフェスが多くの兵隊や群衆がいる中で「わたしは無実だ!」と叫ぶ場面…。ドレフェスはもちろん無実だったのですが、思い返すと、また違う感情が湧き起こって来ました(笑)
"ユダヤ人狩り"を実際に経験したことがあるロマン・ポランスキー監督(フランス人)…。この作品から受けたユダヤ人のイメージは、あまりよろしく無かったかなと…(笑)
(ユダヤ人云々は関係なく、ドレフェスの個人的な資質なんでしょうけど…)
それとも、監督は皮肉を込めて描きたかったのか?
それは、ユダヤ人に対して?ユダヤ人に苦難を強いた非ユダヤのフランス人に対して?…もちろん、この作品のテーマから行くと、後者なんでしょうけど…。
ひとつ思い出しました…。
ドレフェスは、かつてアメリカで児童への強かんで嫌疑をかけられた監督自身なのかも知れません…そう考えると、この作品の明確な意図が見えて来ました(笑)…あぁ、そういうことか…笑
ちなみに、この作品、2019年・第76回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(審査員グランプリ)を受賞しているそうです。