「ピカールの定理」オフィサー・アンド・スパイ 梨剥く侍さんの映画レビュー(感想・評価)
ピカールの定理
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堂々たる映画である。
ドレフュス事件は、日本の世界史の教科書など見ると数行の記述のみで、ユダヤ差別についてもことさら触れていない。また、告発者としてエミール・ゾラやアナトール・フランスの名は出てくるが、この映画の主人公ピカール中佐についての言及はなかった。
思い返せば、ジョン・フランケンハイマーが「フィクサー」を撮り、スティーヴン・スピルバーグが「シンドラーのリスト」を撮り、そしてもちろんポランスキーがかつて「戦場のピアニスト」を撮ったように、ユダヤ系の映画監督にとっては避けて通れないテーマなのだろう。
権力の腐敗と隠蔽は時代と場所を問わず、あまねく存在しているのだろうし、ドレフュス事件は最終的に露見したが、闇に埋もれたままの方が圧倒的に多いに違いない。この映画は肝心のドレフュスの無罪決定を字幕だけであっさり片付けていて、(おそらく監督の狙いなんだろうけど)肩透かし感はある。最後のピカールとドレフュスの再会シーンは、実に皮肉なエピローグだ。
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