「エンディングに救われる。タイトルもすごい」異端の鳥 惑星さんの映画レビュー(感想・評価)
エンディングに救われる。タイトルもすごい
東欧の厳しく美しい田園風景を背景に、少年が過酷な運命に耐える。少年が出会う大人たちは年寄りも女も中年男もふつうの大人たちである。しかし、そのふつうの大人たちが少年を精神的に肉体的に虐げ、少年が安心して暮らせる場所はない。
長尺169分の大部分の時間、モノクロのスクリーンに過酷な試練に耐える少年の姿が描かれ続ける。そんなに続かなくてもよいのではないかと思うし、海外でのプレス向け試写会では途中退場者も多かったという。
物語の終盤、父とやっと再会した少年は口をきかない。父に自分の名前を忘れてしまったのかと問われても答えない。しかし、家に帰るバスに揺られて眠ってしまった父の横で、少年は曇った窓ガラスに指で自分の名前を書く。父への答えであろう。救われるエンディングだった。
最後にタイトルについて。
原題の「The Painted bird」をそのまま訳すと「塗られた鳥」であるが、「自分ではどうにもできないことを理由に差別される鳥」という意味を、やや大げさに、かつ商業的に「異端」とキャッチーな一言で言いつくすとは。屁のような、不要な副題をつける映画も多い中で、すごい。
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